21年9月まで、消費支出が減少→エンゲル係数上昇...コロナ禍「緊急事態宣言」影響も
21年1、2月のエンゲル係数が22年よりも高いことは前述したとおりだが、1、2月の各指標を見ると、可処分所得は前年同月比で減少、消費支出も減少、食料費も減少している。これは、所得が減少したことで、消費が抑えられ、食料費も減少しているということだ。
ただし、食料費を大きく削減することは難しいため、食料費以外の支出を抑えたことで、消費支出に占める食料費の割合が大きくなったことを示している。
この消費支出の大幅な減少は、新型コロナによって政府の「緊急事態宣言」が出されていたことが大きな要因になっている。
ところが、3~5月は消費支出が増加しているが、エンゲル係数は低下している。これは、消費支出の中で、食料費も増加しているものの、消費全体の増加に比べ、食料費の増加は小幅なものになっている。つまり、支出は食料費以外のものに使われたということだ。
その結果、消費支出に占める食料費の割合が小さくなり、エンゲル係数が低下した。
3~5月も政府の「緊急事態宣言」が出されていたが、人々は徐々に普通の生活を取り戻し、テレワークも減少、外出を自粛する傾向も弱まっていた。
政府の「緊急事態宣言」が終了した9月末以降、可処分所得、消費支出、食料費、そしてエンゲル係数もほぼ同じベクトルで動いていることがわかる。
たしかに、エンゲル係数の上昇は生活が厳しくなっている目安だが、新型コロナの影響で行動が制限されれば、可処分所得が増加しても、消費支出が減少し、結果的にエンゲル係数は上昇する。
この場合のエンゲル係数の上昇は、生活が厳しくなったことを示すものではない。したがって、エンゲル係数の上昇は、必ずしも生活が厳しくなっていることの表れとは言えない。