保守主義に信念がなく...サッチャー氏が一番嫌った政策
一方、朝日新聞に載った慶応義塾大学の細谷雄一教授(英国外交史)の「保守主義の信念なし」というコメントはかなり辛らつである。
「トラス外相は、その場その場の環境に順応してキャリアを上昇させてきた。キャメロン政権時は、キャメロン首相(当時)の判断に従い、欧州連合(EU)残留派になったが、保守党が離脱を決めると、強硬な離脱派となった。時代の空気を読み、柔軟に立ち位置を変える力を持つ。
いまの保守党は中道の支持層は離れ、極右政党に近い。トラス氏はサッチャー元首相の服装や話し方を意識し、『サッチャーの再来』というイメージを作ることで保守党員の支持を獲得した」
と、指摘。しかし現実の政策では、
「トラス氏は、減税に取り組みつつ、インフレと高騰するエネルギーに対処すると言っているが、具体的な中身を示していない。これには大規模な財政出動しかないが、さらに大きなインフレが起きれば経済が混乱しかねない。
過剰な財政出動は労働党の政策と変わらず、サッチャー氏が一番嫌った政策だ。トラス氏には、イデオロギーとして保守主義に信念はなく、抵抗はないのかもしれない。ただ、冬に向けてエネルギーが高騰していけば、トラス氏は困難に直面することになるだろう」
と、前途の厳しさに懸念を示した。