1週間以内に公表する「生活費危機」対策に注目
さて、専門家たちはどう見ているのだろうか。
日本経済新聞オンライン(9月5日付)「英国、リズ・トラス新首相誕生へ 与党党首選で勝利」という記事につくThink欄の「ひと口解説」コーナーでは、ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆりさんは、
「ユーガブが9月3日に公表した世論調査によれば、英国の有権者の75%が新首相に生活費危機への対応を望んでいる。しかし、トラス氏が掲げる『家計・企業への減税案を脆弱な世帯などへの所得支援よりも優先させる対策』への支持は47%で半数に届かず、党首選で敗れたスナク氏の『低所得者等支援とエネルギーVAT(付加価値税)の次元的引き下げ』の62%、最大野党労働党のスターマー党首の『光熱費の据え置き』の69%よりも低い支持に留まる」
と、国民の支持率が低いと指摘したうえで、
「保守党の支持層とより広い有権者の望む政策にはギャップがある。1週間以内に公表する『生活費危機』対策が生活費の高騰に苦しむ人々に届く内容となるのか注目したい」
と、ひとまずお手並み拝見という立場だ。
同欄では、日本経済新聞社上級論説委員・編集委員の小平龍四郎記者は、「女性首相」よりも「ころころ変わる英首相」の不安定さに焦点を当てた。
「女性として『3人目』という点が注目されがちですが、(中略)『6年間で4人目』。英BBCの中継もその点に言及していました。サッチャー、ブレア、ブラウンなど実績を残した歴代首相のイメージが強い英国ですが、最近はかなりころころ首相が変わり、安定感を欠きます」
と指摘。そのうえで、
「トラス氏の言動や政策はサッチャー氏と重なる部分があり、『鉄の女2・0』と呼ぶ向きもあるようです。これはトラス氏の政治的なイメージ戦術かもしれず、経済政策や対EU外交で現実的な軌道修正も予想されるところ。そのほうが結果として長期政権の可能性が高まるのではないでしょうか」
と、現実路線への転換に期待した。