年配白人が圧倒的な「身内の保守党員」選挙に勝っただけ
東京新聞はこう続ける。
「当然、懸念も出ている。国民保険料の引き下げでは、新型コロナ対応で疲弊している国民医療サービスの維持が危ぶまれている。グリーン課税は再生エネルギーの導入費用などに充てられており、凍結は温暖化対策が後退する恐れがある。スナク氏は、トラス氏の減税案について『借金頼みで財源が示されず、恩恵を得るのは大企業や富裕層だけだ』と訴えたが、支持は広がらなかった」
その要因について、ロンドン大キングス・カレッジのロッド・ダコーム准教授(政治学)の見方が紹介されている。「『大事なのは、総選挙ではなく保守党員による身内の投票ということだ』。(中略)党員は約17万人で、全人口の0.3%にすぎない。白人が圧倒的で、伝統的価値観を重視する年配男性が多いとされる。『経済や社会問題で、トラス氏は党員の耳に心地いいテーマを選んだ。スナク氏の現実的な経済政策よりも、大義や原則を強調するほうが党員は喜ぶと分かっていた』」
ただ、党員の人気投票を制しても、トラス氏の前途は多難だ。調査会社大手ユーガブによる8月下旬の世論調査では、39%が労働党支持と答え、保守党は31%だった。国民の生活費危機が改善されなければ、2024年総選挙で保守党が大敗するのは必至の情勢だ。