ふだん投資しない層の不満解消&税収穴埋めに課題
こうみると、すでに実現は時間の問題のようにも見えるが、乗り越えなければならない大きなハードルが存在する。
最大の壁は、ふだん投資をしない層の不満をいかに解消するかだ。
金融所得の一部を非課税にするNISAは制度開始直後から「金持ち優遇だ」との批判にさらされてきた。さらに制度を拡充すれば、資産を持つ者と持たざる者、投資家と非投資家の格差は一層、広がることになる。
NISAの大幅拡充によって、減少することになる税収をどう穴埋めするかも大問題だ。
ある自民党関係者は「金融所得課税を強化して新たな財源を生み出せば、NISAによる減収分をカバーできる」と提案する。与党内でも一定の支持を集めているアイデアだ。
ただ、NISA拡充という投資促進策と、金融所得課税強化という投資を冷やす政策の同時展開は、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだとして、互いの政策効果を相殺しあう恐れを指摘する声もある。
とくに、金融所得課税の強化をめぐっては岸田首相が就任当初、実施に意欲を見せていたが、これを警戒する株式市場が下落して「岸田ショック」とも呼ばれ、事実上、方針撤回に追い込まれた経緯がある。これを再浮上させるのは容易ではない。
金融庁を含め各省庁から上がった税制改正要望は今後、与党税制調査会に検討が委ねられ、年末の与党税制改正大綱に反映される。
NISA恒久化は果たして具体化するのか。現時点では予断を許さない。(ジャーナリスト 白井俊郎)