環境考慮した「グリーンGDP」試算、内閣府初公表...ねらいは「脱炭素社会」後押し だが、今後の政策への反映は「及び腰」

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経済活動が環境に及ぼす影響、どう数値化するか?

   政府が毎年6月に閣議決定する経済財政運営の基本指針(骨太の方針)に2021年、22年と続けて「グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進める」などと盛り込まれていたもので、ようやく第一歩を踏み出したかたちだ。

   ただ、経済活動が環境に及ぼす影響は大気だけではなく、水質や森林、生態系の保存などさまざまな要素をとらえる必要がある。だが、それらをどう数値化していくかは簡単ではない。

   今回、内閣府は「環境要因を考慮した経済統計・指標」と題して発表しており、あえて「グリーンGDP」との表現を避けたのも、現状では「グリーンGDP」と言い切るのははばかられると、内閣府自身が認識しているということだろう。

   こうしたグリーンGDPだけに、大手紙の扱いは概して小さく、評価も高くない。

   朝日新聞は2021年9月17日の社説「グリーンGDP 経済のゆがみ 見直そう」で、「脱炭素社会の......推進に向けた機運を高めるうえで、内閣府が検討する『グリーンGDP』が有力な手段となるよう期待したい」とエールを送っていた。

   だが、期待が大きかった反動もあってか、今回の発表を報じた22年8月6日紙面では「内閣府の酒巻哲朗・総括政策研究官は、今回の試算を具体的な政策に活用することは『考えていない』と述べた。国内外にグリーンGDPを広める取り組みも『現時点では特にない』と消極的だ」と、内閣府の姿勢を批判的に書いた。

   一方、日本経済新聞も、発表から約1週間後8月16日のコラム「霞が関ノート」で取り上げ、「内閣府はグリーンGDPを完成させ、政策に生かすことを目指していると考えるのが自然だが、実は現場からその意気込みは伝わってこない。......尻込みする理由は、ひとえにその難しさだ」と、内閣府に「同情」しつつ、「政府は2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、近く官民で150兆円を投じる工程表づくりに乗り出す。政策の基礎となる経済統計を担う内閣府はどう貢献できるのか。『グリーンGDP』の次の一手が見えない」と、冷ややかに書いている。

   内閣府の経済分析部署は、他省庁に比べて比較的中立な政治姿勢の分析として、霞が関でも一目置かれた経済企画庁の流れを汲む。

   「内閣府は......歴代首相の目玉政策の調整に人員が割かれ、職員の官庁エコノミストとしての能力の低下が指摘されている」(朝日新聞21年9月17日社説)と書かれるのも、むべなるかな、というところか。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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