内閣府が、環境対策を国内総生産(GDP)に反映させた「グリーンGDP(仮称)」を初めてまとめた。1995~2020年の日本のGDP統計では、実質成長率は年平均0.57%だが、グリーンを加味すると1.04%に上昇するという結果になった。
産業界などの排出削減努力を評価し、脱炭素社会の実現を後押しするのが狙いだ。ただ、現段階では加味できていない環境への負荷が多く、指標としての完成度はまだまだ。内閣府自身、試算を活用して脱炭素に向けた政策に反映させる予定はないと、及び腰だ。
環境に負荷をかけない経済成長を評価...世界的な動き
GDPは国の経済規模や景気の動きを見るための指標で、一定期間に生み出された経済的な価値を示す。家計、企業、政府、海外経済と幅広い分野の活動を総合的に見ることができる。
しかし、GDPは環境負荷を加味していない。大気や水質を汚染しても、その負の価値は差し引かれないどころか、汚染を浄化するために投資すると、需要が増えてGDPは大きくなる。
こうした歪みを正そうと考案されているのがグリーンGDPだ。温室効果ガスなどの排出量が減れば、環境に負荷をかけずに経済成長していると見なして成長率にプラスと計算する一方、排出量が増えていればマイナスにする。
経済協力開発機構(OECD)が考案し、2018年に各国のグリーンGDPを公表した。それによると、1991~2012年の平均で、たとえば日本の成長率は通常のGDPでは0.93%だが、グリーンでは1.34%に高まる。その一方、中国の成長率は通常は10.21%、グリーンだと9.46%に低下するという結果になった。
今回、内閣府は2022年8月5日、OECDの試算を基に20年まで引き延ばした数字を発表した。それによると、1995~2020年の日本の年平均の実質成長率は0.57%だったが、グリーンを加味すると1.04%に、0.47ポイント高くなる。
期間中、農林水産業や廃棄物処理業などのメタンの削減で0.29ポイント、13年をピークに減ったCO2も0.03ポイント、それぞれGDPを押し上げたという。