よほど込み入った問題でなければ...「民事裁判」がオススメできない理由とは?【尾藤克之のオススメ】

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   「そんなワケないよね」と思っても気になってしまうものです。

   本書は、9人の専門家によって監修された、リテラシー=情報を見極める力、にフォーカスした一冊。どの切り口も興味深いですが、第5章を担当された、堀田秀吾氏(明治大学法学部教授)の法律に関するリテラシーを今回紹介します。テーマは「民事裁判」です。

「超リテラシー大全」(9人の専門家による監修)サンクチュアリ出版

民事裁判は起こさないほうがいい?!

   民事裁判は正式には「民事訴訟」と言いますが、刑事訴訟と違って、誰でも起こすことができます。堀田さんは次のように言います。

「民事訴訟は、話し合いでは解決できなかった問題でも裁判所の判断で決着をつけることができるのが利点です。裁判所が下した判決には強制力があるため、相手が判決に従わない場合は強制執行で差し押さえなどが行われます。『どちらが悪かったか』を白黒はっきりさせることができるのがメリットだと言えるでしょう」(堀田さん)
「しかしながら、民事訴訟による解決は、よほど込み入った問題でない限りはおすすめできない方法です。というのも、民事訴訟には時間もお金も、何より心身に負担がかかります。どれくらい時間がかかるかというと、平均して約9ヶ月です。問題の種類によっては半年で終えるものもあれば、2年以上の長期間にわたるものもあります」(同)

   たしかに、その期間中は、訴訟のことから頭から離れないでしょう。精神的ストレスもかなりなものです。

「お金については大きく訴訟費用と弁護士費用があります。訴訟費用は裁判所手数料や郵便料で、裁判所手数料は訴えで求める金額によって異なり、数千円で済むこともあれば数十万円、数百万円かかることもあります。弁護士費用はピンキリで、着手金 報酬金 実費・日当、手数料、法律相談料などがあります」(堀田さん)
「事件の内容(争いの有無や難易度の違いなど)によって変わりますので、弁護士費用が総額でどの程度必要になるか確認しておきたいところです。特に少額をめぐっての訴訟の場合、勝ったとしてもかけた費用のほうが大きくなるケースがあります」(同)

民事訴訟には時間とお金が必要

   過去に、筆者である私も、民事訴訟を起こしたことがあります。顧問料+コンサルフィーの未払いがあり、最終的に支払いを拒否したため提訴しました。訴訟額は総額1000万円を超していました。月額顧問料の未払いと、受注案件の取り分が争点です。契約書やメールの履歴がありましたので、簡単に勝訴できるものと考えていました。

   ところが、筆者である私の場合は、1年以上かかり、最終的には和解勧告を受け入れました。期日前になると、相手から準備書面が送られてきます(通常は、自分がいかに正しく、相手が間違っているかが書かれています)。これを毎回読み込むのですが、かなりのストレスになります。事実とはまったく異なるストーリーが展開されることがあるからです。

   また、ドラマなどの裁判シーンでは立派な法廷が映し出されることがありますが、これは刑事事件の場合です。民事裁判では、カーテンひとつ隔てた小さいブースで、原告被告が数十センチの距離で顔を突き合わせます。結果的に、訴訟額の十分の一程度の和解金で妥結せざるを得ませんでした。ここから、弁護士費用やら裁判費用を引くと何も残りません。

   司法統計によると、民事訴訟のうち判決にまで至るのは約4割しかありません。多くの場合は落としどころを見つけ、示談金(和解金)などを支払って解決することになります。とはいえ、勉強にはなるので、一回くらいは経験してもいいかもしれませんが......。

   本稿では「民事裁判」を取り上げましたが、本書の主題は「情報を見極める力」です。投資家、医師、大学教授、不動産屋、元刑事など、さまざまな分野の専門家たちの監修の元、質の高い情報がまとめられています。

   自分のためにも、家族を守るためにも、ぜひ参考にしたいものです。

(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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