米国経済の悪化、深刻な事態に陥ったらどうなるか?
さて、今後の世界経済はどうなるのだろうか――。
「米国経済の景気悪化は過去と比べてより深く、より長くなるだろう」とみるのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内登英氏はリポート「1ドル140円超が視野に入るドル円レートとFRBの利上げ姿勢の展望」(9月1日付)のなかで、何が何でもインフレを抑え込もうとするFRBの強いタカ派姿勢が今後、米国経済を下振れさせるとみる。
「FRBのタカ派色が強い政策姿勢、連続した利上げ策は、年内で概ね一巡してくるのではないかとみておきたい。そうなれば、ドル円レートは1ドル140円を超えても、140円台後半、あるいは150円までは容易には進まない。
この先、景気減速観測が広がっていけば、市場のインフレ期待は現在のプラス2.5%程度からプラス2.0%、あるいはそれ以下まで低下していくだろう。しかし、FRBのインフレ警戒は簡単には解除されない可能性が高いことから、FRBは利上げを停止しても利下げに転じるまでには時間がかかる、あるいは利下げに転じてもそのペースはかなり緩やかになりやすいだろう。
そうした中、実質政策金利は一段と上昇してしまい、ダメ押し的に景気を一段と悪化させることになる。この点を踏まえれば、米国経済の悪化は過去の通常の悪化局面よりもより深く、あるいはより長くなりやすいと言えるのではないか」
では、米国経済の悪化が深刻な事態に陥ったらどうなるのか。米国株の大幅な下落とともにドル安を招き、今度は円高に転じるというのだ。
「3月に始められた急速な利上げは、実際には、既に終盤戦に入ってきたと考えておきたい。景気、物価情勢、あるいはFRBの政策姿勢の転換を受けて、足元で進む長期金利の上昇と円安ドル高の流れは、この先、突然方向を変えることもあり得るだろう。為替市場は年内にも急速な円の巻き戻しの動きに転じ、来年には120円台に入っていく可能性も視野に入れておきたい」