「バイ・マイ・アベノミクス」いまや懐かしいフレーズに...
同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏もこう指摘した。
「これは円安というよりもドル高ですね。元々、先週のジャクソンホールのシンポジウムでFRBのパウエル議長が先行きの利上げに対して前向きな発言をしてドル高が進みやすい地合いのなかで、昨晩(9月1日)8月分のISM製造業景況指数が公表され、全然景気が減速していない結果となったことを受けてドル高に拍車がかかった格好です。さらにドル高が進むか一旦落ち着くかは今晩(9月2日)の米雇用統計次第でしょう」
同じく、時事通信社解説委員の窪園博俊記者も、
「円安・ドル高が進行したのは、FRBが金融引き締めを継続する一方、日銀が金融緩和を堅持する、という日米金融政策の方向性の違いのほか、日本の貿易収支が赤字となり、為替売買の需給がドル買い・円売りが優勢になりやすい、といったファンダメンタルズに変化がないためです」
と、日米の金利差の拡大に原因があると指摘したうえで、
「ドル買い・円売りのファンダメンタルズに変化がないこと、チャート的には、7月中旬以降の下げを取り戻して上向きのベクトルになっており、なおトレンドとしては、円安・ドル高が進みやすい、と見込まれます」
と、今後も円安が進行すると予測した。
日本経済新聞(9月1日付)「円、24年ぶり安値を更新 139円台後半に下落」という記事につくThink欄の「ひと口解説」コーナーでは、ソニーフィナンシャルグループ執行役員兼金融市場調査部長の尾河真樹氏が
「パウエル議長のジャクソンホールの講演に加え、FRB高官からのタカ派発言が相次ぐなか、10年物の期待インフレ率(ブレークイーブンインフレ率)が講演前の2.6%付近から、2.4%台まで低下した。同時に名目金利(10年債利回り)が3.2%まで上昇。これにより名目金利から期待インフレ率を除いた米実質金利は講演前の0.4%から0.8%へと上昇した。足下のドル上昇はこれが背景だ」
と指摘したうえで、やはり、
「パウエル議長が述べた通り、米景気の過熱を抑えるとなると、潜在成長率の1.8%付近、少なくとも1.5%付近までは実質金利を引き上げる必要があるだろう。とすれば、ドルの堅調地合いは当面続くことになりそうだ」
と、今後も円安が進むとみている。
一方、同欄では、法政大学経済学部の小黒一正教授(財政学)が、大胆な金融緩和策で円高から円安に誘導した「アベノミクス」時代と比較して、こんな嘆息をもらした。
「政策評価は一定の年数が過ぎないと難しいと思いますが、『Buy my Abenomics』というフレーズが懐かしいです。1ドル70円台の時代と異なり、1ドル140円なら、海外ファンド等は、日本の資産を半分の値段で買えますね」「日米間の金利差に対する拡大圧力は続きます。為替の予測は容易ではないですが、当分の間は、円安モードの圧力が継続するのではないでしょうか」