強気のプーチン露大統領...ブーメランに苦しむ欧州、「抜け道」に群がる国々【ロシアへの経済制裁はなぜ効かない?】(上)

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

英国民はこの冬、食事か暖房かを選ばざるを得なくなる

「生活危機」に直面した英ロンドンの住宅街
「生活危機」に直面した英ロンドンの住宅街

   ロシアへの制裁がブーメランになって返ってきて、エネルギー危機による歴史的なインフレに直撃された欧州の苦境を、大和総研ロンドンリサーチセンター・シニアエコノミストの菅野泰夫氏がリポート「ロシアのガス供給戦略に翻弄される欧州 求められるのは脱・脱炭素か?」(8月25日付) で、ドイツと英国のケースを中心に伝えている。

   図表2はロシアのドイツなどへの報復によって供給を減らされた天然ガスの量と、その分、高騰したガスと石油のスポット価格の推移だ。いかに凄まじい天然ガス不足が欧州を襲っているかがわかる。菅野氏はまずドイツの状況をこう伝える。

図表2:大和総研の作成
図表2:大和総研の作成
「政府はガス配給制導入に向けて準備を進める一方で、シャワー時間を短縮するといった省エネを促し、冬までにガス施設の貯蔵量を引き上げようと必死の努力を続けている。一部都市では既に公共施設での温水供給や公園の噴水、歴史的建造物のライトアップを止めるといった涙ぐましい施策も導入されている。
なお配給制となれば、一般家庭や病院、介護施設また発電など特定産業への供給が優先されるが、他のセクターへの供給は削減されることになり、経済への打撃は必至である。当局は大手企業からデータを収集し、規模や経済的なダメージ、特定施設の再開のコストや期間など6つの基準によって、配給制が導入されたときの休業リストを策定している」

といった状況だ。

   英国の場合は、ロシアのウクライナ侵攻だけが原因ではない。急速な脱炭素社会への移行の反動や、化石燃料に対する投資の急減も加わって、「生活危機」の状況に陥った。

「コロナ危機による行動制限の緩和でガスの需要が急増したうえ、ロシアからの供給に懸念が生じたためにエネルギー価格は急速に上昇し、40年来の高水準となる10%を超えるインフレの主因となっている。政府は一度限りの400ポンド(約6万4800円)のエネルギー料金割引や、地方税の一部還付といった支援パッケージを策定したが、焼け石に水の感がある(食品価格も高騰しており、生活費危機は改善の糸口が見えない状態にある)」
「低所得層では冬にかけて、食事か暖房かを選ばざるを得なくなる事態も十分に考えられる。エネルギー料金の高騰で巨利を得たエネルギー企業への怒りも強まり、料金の支払いを拒否する市民運動も高まりつつある」

といったありさまなのだ。

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