制裁の「抜け道」にインド、トルコ、ブラジル、中国
大和総研 経済調査部エコノミストの増川智咲さんはリポート「対ロシア制裁は失敗なのか」(8月19日付)で、経済制裁の効果がなかなか表れない理由について「抜け道」の存在を指摘した。
ロシア産エネルギーの輸入停止に移行期間が設けられているが、2022年8月半ば時点で、エネルギー全般の輸入停止をしているのは、米国、カナダ、オーストラリアの3か国だけ。この3か国は、もともとロシア産エネルギーへの依存度が低いうえ、ロシアにとっても3か国に対する輸出額は全体の約4%と小さい。お互いにほとんど痛みを感じないわけだ。
問題は制裁に加わっていない国々だ。図表1は各国の対ロ輸入額を前年比で表したものだ。増川さんはこう指摘する。
「制裁に加わっていない国々がロシア産エネルギーの代替輸出先となっている点である。(中略)制裁参加国である米国、日本、韓国の輸入額が前年比で大きく低下しているのに対し、制裁に加わっていないインドやブラジルの対ロ輸入額は大きく増加している。インドは、アジアで中国に次ぐ石油精製能力を持つが、精製用の原油を輸入に依存している。そのため、割安なウラル産原油を購入し、石油製品を高価格で輸出することで、価格マージンを得るインセンティブが大きい。またブラジルは、ロシアへの依存度の高い、化学肥料や小麦の輸入を増加させている」
ただし、増川さんは2023年には「抜け道の大半が塞がれる」として、「制裁は失敗ではなく、ロシア経済に負の影響をもたらしているのは確か」と結んでいる。