ロシア港を出港する石油タンカーに変化はない
いったい、なぜ経済制裁の効果がみられないのか――。
日本経済新聞(8月30日付)の「中国が学ぶ対ロシア制裁の限界」という記事につくThink!欄の「ひと口解説」コーナーでは、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際経済学)が、
「対ロシア制裁は前例のない規模で行われているが、SWIFT(国際銀行間通信協会)からすべてのロシア系銀行を排除せずにガス関連の銀行の決済を可能にするなど完全な意味での制裁ができていないこと、および西側が適用した制裁に参加せずロシアとの取引を継続した国や企業があっても二次的制裁が適用しにくいことが、効果を弱めている」
と指揮したうえで、
「ロシア港を出港する石油タンカーの貨物量はウクライナ戦争前と変化がないとの指摘もある。ロシア経済の4~6月期の経済成長率はマイナス4%とマイナス幅が小さかった。ロシアがノルドストリーム1のパイプラインを8月31日から9月2日まで閉鎖するためEUガス価格が急上昇しており、欧州経済への打撃も大きい」
と、むしろ欧州のほうの打撃が大きいと述べた。
ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆりさんも、こう指摘した。
「ドル、ユーロ、円、ポンドなど制裁に参加した通貨が国際取引に占める割合は、国の数やGDPに占める割合より遥かに高い。金融制裁の効果が期待された理由だ。しかし、エネルギー収入が得られるロシアは、国際金融市場へのアクセスが制限され、資本流入が絞られても麻痺しなかった。逆に、国際通貨や国際金融市場での圧倒的地位を武器化したことで、西側通貨や金融市場の地位低下は進みそうだ。(中略)グローバル化は、供給網だけでなく金融面でもピークは過去のものになったのではないか」