「社外取締役」で水増しされた女性役員にならないために...
さて、個別企業でみると、女性役員比率が最高の上場企業は、無線通信・応用機器メーカーのユニデンホールディングス(東京都中央区)の60.0%。役員5人のうち社外取締役に女性役員3人を登用し、前年度(10.0%)から50.0ポイント上昇した=図表2参照。
2位は、女性役員比率50.0%で6社が並ぶ。老人介護ホーム運営の光ハイツ・ヴェラス(北海道札幌市、女性役員4人)とコンビニ経営のローソン(東京都品川区、同5人)、書店経営の三洋堂ホールディングス(名古屋市瑞穂区、同5人)、コミュニケーションツール提供のAI CROSS(東京都港区、同3人)、ストレージ製造のニューテック(東京都港区、同4人)、バイオベンチャーのセルシード(東京都江東区、同3人)だ=再び、図表2参照。
2021年度の上場3,795社の女性役員数は3,575人で、初めて3,000人を突破した。2021年3月、経団連は『2030年30%へのチャレンジ(#Here We Go 203030)』で、ポストコロナを見据えた「新成長戦略」を打ち出した。
多様な価値の包摂と協創に向け、「多様な人々の活躍促進」への取組みの具体的な目標として「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを掲げている。
東京商工リサーチは、こうコメントしている。
「機関投資家も女性役員がいない上場企業は、代表者の取締役選任案に反対する動きも出ている。一方、前年度に女性役員ゼロで2021年度に女性役員を登用した311社(人数341人)のうち、社外役員での登用が286社(構成比91.9%、312人)だった。社外取締役で水増しされた女性役員とならないように、数値だけでなく実態にも目を向けることが必要だ」
女性役員が「社外取締役」という肩書で9割以上も水増しされている実態を明かしたうえで、こういった警鐘も鳴らしている。
「社外取締役を含めて、役員はガバナンスの強化だけでなく、新しい視点や柔軟な発想で成長を実現する権限と責任を問われることを忘れてはいけない」
調査はすべての上場企業のうち、7月31日までに有価証券報告書を提出した2021年度(2021年4月期~2022年3月期)決算を対象に、有価証券報告書の役員状況に記載された男性・女性の人数を集計、分析。「役員」は、「会社法上の取締役、監査役」および「執行役」などを対象にした。
(福田和郎)