米マッキンゼー・アンド・カンパニーが2007年に発表した「Women Matter」リポートによると、企業の女性リーダー層の多さと業績パフォーマンスの良さの間には高い相関関係があるという。
これまで、なかなか女性役員の登用が進まなかった日本の上場企業にも明るい兆しが見えてきた。東京商工リサーチが2022年8月23日に発表した「2021年度上場企業決算『女性役員比率』調査」によると、上場企業の女性役員は前年より大幅に増えて3575人となり、初めて3000人台を突破した。
順調に女性活躍が進んでいるが、そこにも課題があるという。それは――。
女性役員ゼロ企業の取締役選任案に反対する機関投資家
東京商工リサーチの調査によると、2021年度の上場3795社の役員総数は3万9601人で、このうち女性役員数は3575人(前年度比21.8%増、前年度2934人)に増え、初めて3,000人を突破した。女性役員比率も9.0%で、前年度の7.4%から1.6ポイント上昇した=図表1参照。
女性役員数は、2017年度(1560人)からの4年間で2.2倍に増え、着実に女性役員の登用は進んでいる。ただ、女性役員ゼロが1443社(構成比38.0%)と約4割もあり、一気呵成といかない現実もある。
図表1を見てもわかるように、2021年度中に急に増えた形だが、これは2021年6月11日、東京証券取引所などが改訂コーポレートガバナンス・コードを公表し、上場企業に多様性確保に向けた人材育成方針を求めたことが大きい。
また、日本経済団体連合会(経団連)も同年3月、「2030年30%へのチャレンジ」というポストコロナを見据えた「新成長戦略」を打ち出した。その中で、「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを3本柱の1つに掲げている。
一方、国内外の機関投資家の間にも、女性役員がいない上場企業に対して、代表者の取締役選任案に反対する動きが広がっている。
こうした背景から、上場企業の女性役員数は増えたわけだが、「社外取締役」への登用が多いのが特徴だ。ただ、社内外を問わず就任後の貢献度など、役員の機能チェックが問われることに変わりはない。
一方、女性役員がゼロは1443社(前年度比14.7%減、前年度1693社)で、全体に占める割合は38.0%と、前年度(45.7%)から7.7ポイント低下した。
産業別にみると、女性役員比率の最高は小売業(11.4%)で、次いで水産・農林・鉱業(11.28%)、電気・ガス業(11.26%)金融・保険業(10.8%)と続く。最低は建設業(7.6%)だが、ただ、女性役員数は141人で、前年度の123人から18人増加している。
市場別にみると、女性役員比率の最高はグローバル展開企業が多い東証プライム(11.4%)で、役員総数が2万1100人(前年度2万1333人)に減少するなかで、女性役員は2406人(同1974人)と432人増えた。次いで、名証ネクスト(10.3%)、東証PRO(10.0%)、東証グロース(9.1%)、札証アンビシャス(9.0%)と続き、最低は福証(2.9%)だった。