御社はどうですか? SDGs、積極的な企業5割超!メリット実感7割!「ビジネスチャンスにつながる」「社員のモチベーション&企業イメージ向上」

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「SDGs取り組んでいますか?」

   欧米では、投資家が投資先を決める際、企業が社会貢献の取り組みを行っているかどうかが重要な判断基準になってきているが、日本企業ではSDGsはどのくらい広がっているだろうか。

   帝国データバンクは2022年8月25日、「SDGsに関する企業の意識調査(2022年)」を発表した。SDGsに積極的に取り組んでいる企業は5割を超え、そのうち7割近くがメリットを実感していることがわかった。

  • SDGsは地球を守る企業の責任だ(写真はイメージ)
    SDGsは地球を守る企業の責任だ(写真はイメージ)
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「明るい展望を地域にもたらし、自社の存続にもつながる」

   SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)とは、簡単に言うと、「世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界のみんなで2030年までに解決していこう」という計画・目標のこと。

   2015年9月の国連サミットで採択された「2030年アジェンダ」には、「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「海の豊かさを守ろう」など17項目の目標が掲げられている=図表1参照

(図表1)SDGsの17目標(アイコン)(経済産業省の公式サイトより)
(図表1)SDGsの17目標(アイコン)(経済産業省の公式サイトより)

   この中には、企業がすぐに取り組みやすい「働きがいも経済成長も」「つくる責任つかう責任」といった項目も入っており、現在、政府が音頭を取って官民あげた「行動の10年」としてSDGs推進が求められている。

   帝国データバンクの調査では、まずSDGsへの理解や取り組みについて聞くと、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は23.6%となった。「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」(28.6%)と合計すると、「SDGsに積極的」な企業は52.2%と半数以上となった=図表2参照

(図表2)SDGsへの理解と取り組み(帝国データバンク作成)
(図表2)SDGsへの理解と取り組み(帝国データバンク作成)

   前回調査(2021年6月)より12.5ポイント増となり、SDGsに前向きな企業が増えていることがうかがえる。

   企業からは、「『やらなければいけない』という義務感よりも、小さなことでも取り組むことによって、明るい展望を地域にもたらすことができ、それが自社の存続にもつながると考えている」(印刷、富山県)との声も聞かれ、熱心に取り組んでいる様子がみられた。

   一方、SDGsに消極的な企業からは、「政府にもう少し強く先導してほしい。具体的でないとわからない人や動かない人が多い」(コンビニエンスストア、福島県)や、「CO2排出削減に取り組みたいが、設備投資費用が大きく、なかなか手が出せない。補助金・助成金制度の拡充が必要」(米菓製造、三重県)といった政府の支援を期待する声があげられた。

「女性活躍推進と、ペーパーレス化に取り組んでいる」

   企業の規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が68.6%となり、「中小企業」(48.9%)を大きく上回った。依然として企業規模間に格差が生じている=図表3参照

(図表3)SDGsに積極的な企業割合~規模・業界別(帝国データバンク作成)
(図表3)SDGsに積極的な企業割合~規模・業界別(帝国データバンク作成)

   中小企業からは、「零細企業における具体的な取り組み目標が思いつかない」(セメント卸売、高知県)や「中小企業には人材、資金面などのハードルが高い」(木製建具工事、北海道)などといった厳しい声があげられた。

   一方、「取引先のグローバル企業方針で日本だけでなくグローバルに通用するものでないと社会経済に取り残されるというのが印象に残っている」(一般貨物自動車運送、広島県)という声にあるように、着手はしていないが、SDGsの重要性を実感している中小企業もある。

   SDGsに積極的な企業を業界別にみると、『農・林・水産』が72.6%でダントツに高かった。やはり、直接地球環境にかかわる仕事をしているためだろうか。次いで、『金融』(62.3%)や『製造』(57.1%)が上位に並ぶ=再び、図表3参照

   こうした企業からは、「ペーパーレス化の促進のほか、女性活躍推進などジェンダーレスに取り組んでいる」(信用金庫、茨城県)、「次世代に向けて、持続可能な地球になるよう、大量生産・大量廃棄から脱却し、リサイクルやリユースにできるところから実施している。廃棄物の分別は重要であり、分ければ資源、混ぜればゴミとなる」(SW電源等製造、徳島県)といった声が聞かれた。

「人材の定着率向上にもつながる」

   ところで、SDGsには17の目標が設定されているが、企業はどの項目に熱心に取り組んでいるのだろうか。現在力を入れている項目を聞くと(複数回答)、働き方改革などを含む『働きがいも経済成長も』(31.4%)が最も高かった=図表4参照

(図表4)SDGs17目標のうち、現在力を入れている項目(帝国データバンク作成)
(図表4)SDGs17目標のうち、現在力を入れている項目(帝国データバンク作成)

   これは、文字通り、「働き方」と「経済成長」に焦点を当てた内容で、「キャリアパスに応じた研修」や「従業員の健康保持・増進」「障害者の雇用促進」「ライフワーク・バランス」「環境に配慮したサプライチェーン」といった幅広い取り組み方があり、企業にとって取り組みやすい目標だ。

   次いで、リサイクル活動やエコ商品の生産・使用などの「つくる責任つかう責任」(22.9%)、再生可能エネルギーの利用などの「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(22.5%)、CO2排出量の少ない原材料の使用などの「気候変動に具体的な対策を」(21.1%)が続いた=再び、図表4参照

   SDGsに取り組んだ効果について聞くと(複数回答)、ダントツのツートップは「企業イメージの向上」(37.2%)と「従業員のモチベーションの向上」(31.4%)だ。両方とも人材の定着率向上にもつながるという点で、経営面でも大きなプラスになる=図表5参照

(図表5)SDGsへの取り組みによる効果(帝国データバンク作成)
(図表5)SDGsへの取り組みによる効果(帝国データバンク作成)

   次いで「経営方針等の明確化」(17.8%)、「採用活動におけるプラスの効果」(14.0%)、「取引の拡大(新規開拓含む)」(12.3%)などが続き、企業の見られ方の向上に関する効果が上位に並んだ=再び、図表5参照。全体的にSDGsの効果を実感している企業は66.5%となった。SDGsをビジネスチャンスとして捉え、実際に売り上げ向上につなげた企業が多かった。

既存の活動がSDGsに該当する場合もある

太陽光発電で製品を作ることもSDGsだ(写真はイメージ)
太陽光発電で製品を作ることもSDGsだ(写真はイメージ)

   企業からはこんな意見が相次いだ。

「SDGsはビジネスになることに関する理解が高まったと思う。今後も売り上げ増が見込めるのであれば環境にやさしい素材を販売していきたい。ただし、商品によっては価格が一番大事で高価格商品は相手にしない企業も多い」(織物卸売、大阪府)
「取り組む過程でいろいろな企業、団体とかかわることが多く、社員のモチベーションがだいぶ上がった。自社の取り組みに対して自信が持てるようになったようだ」(産業用機械器具賃貸、愛知県)
「始めた当初は太陽光発電などの推進をうたっていたが、今はジェンダー平等、自社の雇用環境の見直しなど、自社および自社が活動している町を持続可能にするにはどうしたら良いか考えるようになった」(木造建築工事、三重県)
「子供食堂や木工物のふるさと納税、環境保全活動のために自治体と木製コンポストの普及を進めるなど、産官学で取り組みを進めている。その結果企業のイメージが向上、地元からの受注増に繋がっている」(木造建築工事、愛知県)

   こういった案配だ。

女性社員の積極登用もSDGsだ(写真はイメージ)
女性社員の積極登用もSDGsだ(写真はイメージ)

   帝国データバンクでは、

「企業の66.5%が取り組みによる効果を実感している結果となった。このように、SDGsの達成に向けた企業の取り組みは、単なる社会課題解決に向けた貢献だけでなく、企業価値の向上やビジネスチャンスの獲得にもつながる。また、SDGsを通じて社会の課題を認知し、対応することで経営リスクの回避につながり、企業の持続可能な成長を実現する効果も期待できる」

と、SDGsをビジネスに生かすメリットを強調したうえで、こうアドバイスする。

「『どのように対応すればよいか分からない』(中略)『費用面・人材面での余裕がない』などといった声も聞かれ、課題は依然として多く残っている。企業はSDGsに新たに取り組むだけでなく、まず既に行っている自社の活動がSDGsのいずれに該当するかどうかを確認することも大切だと考えられる」

   調査は2022年6月17日~30日、全国2万5405社にアンケートを送り、1万1337社(44.6%)から有効回答を得た。SDGsに関する調査は2020年6月、2021年6月に続いて今回で3回目。

(福田和郎)

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