「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
この秋、食料品値上げの第2波
「週刊東洋経済」(2022年9月3日号)の特集は、「食料危機は終わらない」。ウクライナ危機、歴史的円安、相次ぐ異常気象......この秋、輸入依存の日本に押し寄せるのは食料インフレの連鎖だ、と警告している。
食料品の値上げが続いているが、この秋に春を超える第2波が到来する、と予想している。
帝国データバンクが8月に発表した「食品主要105社」を対象にした調査によれば、10月は酒類・飲料や加工食品などをはじめ、6305品目で値上げが計画されている。
2~4月は単月で1100~1400品目程度、最も多かった8月の2431品目と比べても10月はその2.5倍以上と突出している。値上げ率の平均は、加工食品で16%、酒類・飲料で15%、そのほかも13%前後だ。
小麦やトウモロコシ、大豆など穀物の価格は南米、北米など主要産地の不作で2020年末から21年にかけてすでに上昇していた。そこへ、世界有数の穀物輸出国であるウクライナとロシアとの戦争が起きたことで、輸出制限への懸念が高まった。
国際的な価格指標である「FAO食料価格指数」は、20年には100前後だったが、今年3月には159.3と過去最高値を更新した(14~16年の平均価格を100とする)。
日本の食料自給率は38%。6割超を輸入に依存している。国際価格の変動に左右されにくい基盤をつくるためには、食料の国産化が急務としているが、容易ではなさようだ。
◆異常気象が常態化する
異常気象が常態化し、干ばつが頻発。穀物生産は減少する、という編集部レポートに驚いた。
岡山県のブドウ農家では、猛暑の影響でブドウが紫色にならない現象が、ここ4~5年続いているという。見た目が劣るため、出荷価格は半値~7掛けに下がってしまう。気候の影響で、果樹が弱り、病害虫が発生するなど、気象リスクは深刻になっているという。
国立環境研究所や東京大学などのチームは今年6月、「異常気象が常態化する」時期を世界で初めて推定した。地中海沿岸や南米、北アフリカなどでは今後30年以内に過去最大の干ばつが急増するという予測だ。
同研究所の別の発表では、気候変動の影響で、今世紀末にトウモロコシは24%減、一方小麦は高緯度地域で広く栽培されているため18%増というデータもある。
国内での食料自給が叫ばれるが、事情はそう簡単ではないようだ。
国はコメ以外への転作を勧めるが、転作の交付金厳格化で農家は悲鳴を上げているという。
麦や大豆に転作すれば、毎年0.1ヘクタール当たり3.5万円が農家に直接給付されている。ところが、用水路がないなどコメが作れない「水田」も対象になっていたことが判明し、27年までの猶予期間ののち支給が打ち切られることになった。5年後には耕作放棄地が増えるかもしれないという。
ITツールを使い、作業の効率化を進めると期待された「スマート農業」が苦戦している実態もレポートしている。
富士通はクラウド型栽培システムの大部分のサービス提供を終了。東芝も植物工場事業から撤退した。JA(農協)グループ幹部の「大手の設計思想が農業現場のニーズとずれていたからだ」という言葉を紹介している。コストが高く、農家が導入するには壁があるようだ。
日本総合研究所会長の寺島実郎氏は、「日本の国家のレジリエンス(有事に耐えうる回復力)として、都市型農業の基盤を構築せよ」と話している。東京都の食料自給率はゼロだ。もしも物流がストップしたとき、どうするか? 食のバリューチェーンを再設計することが必要だ、と訴える。
食料品の値上げがこのまま続くことが常態化したら、生活を含めさまざまな見直しが求められるだろう。