「移民政策とらない」政府見解、労働力不足補う「外国人材」...建前と本音の矛盾解消を
政府はこうした海外の目も意識し、2019年4月、外国人材の受け皿として、転職の自由もある「特定技能制度」を設けた。
人手不足が顕著な介護や建設、農業など14業種を対象に、技能水準や日本語能力などによって、特定技能1号(最長5年・家族帯同不可)、同2号(期限なし・家族帯同可)を設け、業種ごとに受け入れ人数(5年間で計約34万人)を定めている。
特定技能制度が発足した当時から、人権侵害と批判される技能実習を廃止して、特定技能に統合すべきだとの声がある。一方で、特に「特定技能2号」について、自民党保守派などから「事実上の移民解禁だ」と警戒する声が上がる。
今回の見直しは、「移民政策はとらない」という安倍晋三政権時代からの政府の公式見解と、労働力不足を補うために実態として「移民」を受け入れているという、建前と本音の矛盾が解消できるかが焦点になる。
現在も技能実習から特定技能への移行が可能だが、日本語能力などハードルは高いといわれ、スムーズに移行できるようにするための政府の支援なども求められる。
「企業が外国人を低賃金で働かせるようなやり方は、国際的に通用しない。こんなことを続けていては、世界から批判を浴び、日本の産業は立ちゆかなくなる」(読売新聞8月20日社説)など、移民反対の産経新聞を除くと、大手紙各紙は技能実習の抜本的な見直しの必要で共通。日経新聞(8月12日社説)や朝日新聞(8月5日社説)は、技能実習の廃止、特定技能への一本化を明快に求めている。
少子高齢化、人口減少で労働力不足はさらに深刻になっていくのは避けられない。その中で、「課題を先送りすれば、世界での人材獲得競争に後れを取るばかりだ」(日経新聞社説)。
のんびり構えている時間はない。(ジャーナリスト 白井俊郎)