中小企業は人件費の吸収が難しい状態続く
今回の調査結果について、東京商工リサーチはこうコメントしている。
「2022年度の『賃上げ実施率』は82.5%で、前年度の70.4%を12.1ポイント上回った。コロナ前の2019年度(80.9%)を超える水準に戻したが、製造業などの業績回復だけでなく、断続的な物価上昇も影響したとみられる。
コロナ禍で業績への影響を克服できていない企業は賃上げが難しく、賃上げ実施率は規模や業種により濃淡が出た格好だ」
と、物価上昇によりやむなく賃上げに踏み切った企業が多いと分析。そのうえで、
「特に、燃料費高騰と人手不足の影響が深刻な運輸業は、大企業の95.2%が賃上げを実施したが、中小企業の実施率は73.9%にとどまった。体力のある大企業は、人手確保のため賃上げに踏み出しているが、燃料費の高止まりや価格転嫁の遅れで収益を圧迫されやすい中小企業では、賃上げ実施の余力が乏しい企業も少なくない。
『新しい資本主義』では賃上げが重要課題に浮上しているが、中小企業は人件費の吸収が容易でない状態が続くだけに、包括的な支援が必要になっている」
と中小企業に対する支援を求めた。
調査は、2022年8月1日~8月9日にインターネットによるアンケートを実施、有効回答6204社を集計、分析した。賃上げの定義を「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)増額」「新卒者の初任給増額」「再雇用者の賃金増額」とした。また、資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業を含む)を「中小企業」と定義した。
(福田和郎)