「ベースアップ」実施率、3年ぶり40%台に
さて、実際に賃上げした項目はなんだったのか。
「実施した」と回答した企業に内容を聞くと(複数回答)、最多は、「定期昇給」(81.0%)で、次いで「賞与(一時金)増額」(44.2%)、「ベースアップ」(42.0%)、「新卒者の初任給増額」(18.2%)の順だった=図表3参照。
前年(2021年)度と比べ、「定期昇給」は2.1ポイント低下した。だが、「賞与(一時金)増額」は6.5ポイント、「ベースアップ」は11.7ポイント、とそれぞれ上昇した。働く人にとって「ベースアップ」が一番ありがたく、また企業にとっては一番の負担といわれるが、物価上昇などを背景に、「ベースアップ」を実施した企業は2019年度以来、3年ぶりに40%台に乗せた。
ところで、今年の春闘前に岸田文雄政権は経済界に「3%以上の賃上げ」を要請していたが、実際の賃上げ率はどうだったのか。
「実施した」と回答した企業に1%単位の区切りで賃上げ率を聞くと、最多は「1%以上2%未満」(33.4%)で、次いで「2%以上3%未満」(31.9%)、「3%以上」(30.2%)、「1%未満」(4.5%)となった。
つまり、「1%未満」を含んだ「賃上げ率3%未満」は69.8%で、実施企業の約7割が3%未満の賃上げにとどまったわけだ。
規模別にみると、不思議な結果が目を引く。賃上げ率「3%以上」は大企業が賃上げした企業全体の18.4%に対し、中小企業は31.6%に達し、逆に、中小企業が13.2ポイントも上回ったのだ。約1.7倍も多い。これはなぜか。
東京商工リサーチでは、
「大幅賃上げは中小企業の収益圧迫が危惧されるが、経済活動の本格再開で人手不足が懸念されており、人材確保のためにも賃上げせざるを得ない中小企業の姿が浮かび上がる」
と、分析している。