「パウエル氏は『極めて当たり前』のことを言っただけ」
野村アセットマネジメントの石黒英之氏同様に、「冷静に米経済の行方を見守ろう」とアドバイスをするのは、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。
市川氏のリポート「米ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演を終えて」(8月29日付)によると、「パウエル議長の発言は当然の内容で、株安はやや行き過ぎ。発言の妥当性を理解すれば次第に落ち着くだろう」とみる。
市川氏は「パウエル発言」のポイントを、インフレに関して過去から学ぶ「3つの教訓」として整理(図表3参照)して、こう指摘した。
「一般に、金融政策の効果が浸透するまでには、半年から1年ほどの時間を要するとされます。FRBは3月に利上げを開始しているため、雇用や物価に影響があらわれるのは、まだ先です。そのため、金融当局としては、現時点で利上げの手を緩めることはできず、タカ派姿勢を維持し、期待インフレ率を抑え込むことが必要であり、緩和期待は時期尚早となります。その意味で、今回のパウエル議長の発言内容は、『極めて当たり前』といえます」
そして、野村アセットマネジメントの石黒英之氏同様に、金利先物市場はまったく動揺していないとして、こう結んだ。
「実際、米10年国債利回りやドル円相場は、比較的落ち着いた反応となっており、フェデラルファンド(FF)金利先物市場でも、過度な利上げが織り込まれたわけではありません。ただ、米国株の反応は極めて大きく、やや行き過ぎのように思われますが、パウエル発言の妥当性を理解すれば、落ち着きを取り戻すとみています。金融市場はこの先、米利上げ継続を基本に、雇用や物価のデータを精査し、利上げペースを探っていくと考えます」
(福田和郎)