「景気を犠牲にしても...」パウエル爆弾発言に米国・日本株急落! 世界経済悪化か?株式市場の過剰反応か?...エコノミストはこう読み解く

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「FRBの金融引き締めが世界経済を悪化させる」

円安ドル高が一時、1ドル139円まで進んだ(写真はイメージ)
円安ドル高が一時、1ドル139円まで進んだ(写真はイメージ)

   野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、パウエル議長が短い講演の中で1980年代のボルカーFRB議長(当時)を引き合いに出したことに注目した。

   木内氏はリポート「ジャクソンホールで改めて示されたFRBの『景気を犠牲にしても物価高を定着させない』という強い意志」(8月29日付)のなかでこう述べた。

「注目されるのは、40年前の1980年代初頭に当時のボルカー議長が、急速な利上げで物価の安定を取り戻したという経験についてパウエル議長が言及したことだ。インフレファイターとして名声を高めたボルカー議長と自身とを重ね、物価安定の回復が自身の歴史的な責務であることをアピールしたかのようにも見える。
ただし、80年代初頭と現在とでは、高い物価上昇率は近いものがあるが、米国経済の成長力は現在のほうが格段に落ちている。その中で40年前と同じ姿勢で金融引き締めを進めれば、40年前には見られなかったほどの深刻な景気悪化を招く可能性があるのではないか」

と、パウエル議長の「強い姿勢」が世界経済にマイナスにならないか、と疑問を投げかける。そして、こう指摘する。

どうなる世界経済?(写真はイメージ)
どうなる世界経済?(写真はイメージ)
「実は、FRBの金融引き締め策が景気に本格的に悪影響を与えるのは、景気減速の兆候が広がり、企業、家計、金融市場の期待インフレ率(物価見通し)が本格的に低下を始めてから、つまりこれから先のことなのである。
そうした環境下でも、『景気を犠牲にしても物価高を定着させない』との強い覚悟を固めたFRBは、容易には利下げに転じない、あるいは利下げに転じるとしてもそのペースは緩やかになりやすい。そのもとでは、景気に影響を与える実質短期金利(名目短期金利―期待インフレ率)はむしろ上昇し、追加で景気抑制効果を発揮することになってしまうのである」

   木内氏は、「FRBの金融引き締めが米国および世界経済を悪化させてしまうオーバーキルのリスクは相応に高い。(中略)その過程で、ハイイールド債、証券化商品など高リスク資産の調整が本格的に引き起こされれば、世界の金融市場は深刻な危機状態に陥り、深刻な世界同時不況のリスクが高まるだろう」と分析する。

   そうなると、日本経済はどうなるのか。急速な「円安の加速」と、それとは逆の「円高への巻き戻し」が起こる可能性も考えられる。

「この先、FRBの利上げがさらに進むとの期待から米国長期利回りが一段と上昇すれば、それが140円を超える円安を招く可能性がある。(中略)日本経済の最大のリスクは、FRBの利上げによる米国および世界経済の悪化である。さらに、いずれFRBの利上げ打ち止め、あるいは利下げ観測が金融市場で高まると、米国の長期利回りが低下して、為替市場では急速な円高の巻き戻しが生じるのではないか」

   そして、こう結ぶのだった。

「その場合には、日本の株価の下落幅や景気の悪化の程度は、他国よりも大きくなりやすい点に留意しておきたい」
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