模索続く代替調達先...タイミング悪く、岸田首相の中東訪問取りやめ
エネルギー調達を武器に対立国に揺さぶりをかける手法はプーチン政権の常とう手段だ。欧州経済をリードするドイツが、その圧力にさらされている。
ロシア側は6月、ロシアとドイツを結ぶ海底パイプライン「ノルドストリーム」の天然ガス輸送量を突然、約4割に削減した。7月にはさらに削減量を増やし、現在は計画量の2割しか供給されていない状況だ。
ロシア側はカナダで修繕していたドイツ・シーメンス製タービンの返却が対露制裁の影響で遅れている影響だと説明しているものの、これがロシア批判を強めるドイツに対する嫌がらせであることは明白。問題のタービンは修繕を終え、すでにドイツに戻されているものの、ロシア側が書類不備を理由に受け取りを拒否し続けている。
さらに、ロシア側は8月19日、今度はパイプラインの保守点検を理由に、「ノルドストリーム」を31日から3日間にわたって停止すると発表した。今後も、何かにつけてガスの供給削減圧力を強めるとみられ、ドイツや欧州のエネルギー不安が一気に拡大している。
サハリン2もノルドストリーム同様、供給が突然、途絶えるリスクはくすぶり続ける。
日本政府もこうした事情は承知しており、ロシアに代わるLNGの新たな安定調達先確保を急いではいるが、取り組みは空回り続きのように見える。
岸田文雄首相は8月下旬に中東各国を歴訪し、得意とする外交力でLNGの新規調達につなげる戦略を描いていたが、直前に首相の新型コロナウイルス感染が判明。中東訪問は取りやめになった。
ある政府関係物は「コロナ感染は仕方がないとはいえ、タイミングがあまりに悪すぎる」と嘆く。サハリン2という「アキレス腱」を抱えた日本のエネルギー確保は、今後も難路が続きそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)