SDGsも、経営理念も「お題目」と軽視する部下...どう諭す?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 10】(前川孝雄)

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チーム・ビジョン創りの6ステップとは

   では、メンバー全員による「私たちのビジョン創りミーティング」を想定し、6つのステップで進めていきましょう。

《ステップ(1)「顧客は誰か」》
   まず、自社の主な顧客層の属性や状態などを書き出し、お客様の像を明確にしていきます。たとえば、「共働きで多忙ななか、家計を預かり、やりくりに悩む主婦・主夫」「地域の生活インフラを支える中小・零細企業経営者」などです。一者に絞るのではなく、大切にしたい複数の顧客層を優先順に挙げていくことで構いません。

《ステップ(2)「どんな課題に」》
   (1)であらためて明確にした主な顧客層が、日常の生活やビジネスの中で、どのような課題を抱えているか想像し、意見を出し合います。たとえば、主婦・主夫なら、「生活必需品のお得情報を知りたい」「物理的に自由になる時間が足りない」などです。 ここでは既存の自社商品やサービスに拘らず、幅広く意見を出し合うと、顧客自身も気づかなかった課題やサービスが見つかり、次なるビジネスのアイディアにもつながります。

《ステップ(3)「何をもって」》
   これは、次のステップ(4)の行動を支えるコンセプトにもあたるもので、「何を大切にして行動するか」です。例えば「徹底的にお客様に寄り添う」「お客様からの信頼を大切にする」などです。自チームの特徴が大きく表れるところなので、できるだけ多く意見を出し合い、議論を重ね、「自分たちが何のために働いているのか」を全員で掘り下げて考えましょう。

《ステップ(4)「どんな行動で」》
   (3)に基づいて、どんな行動をするか具体的に考えます。「どの企業よりも、お客様の依頼にスピード感を持って応える」「お客様の多様なニーズに確実に応えられるよう、リサーチに努め、品揃えを拡充する」など、日々仕事をするうえでの行動指針を定めていきます。

《ステップ(5)「どう役立つか」》
   (3)と強く関連するので、組み合わせて考えるといいでしょう。たとえば、「(3)徹底的にお客様に寄り添う」なら、「(5)お客様自身も気づいていない課題を発見し、解決する」といったイメージです。

   自分たちの仕事を通して、お客様にどう良くなってほしいのか、どんな幸せを感じてもらいたいのかを、とことん話し合ってみましょう。目先の業績にこだわって、あるいは、日々の忙しさのあまり、見失いがちな「自分たちの本当の目的」を再認識できるはずです。

《ステップ(6)「キーワード」の抽出》
   最後に、自分たちで話し合って決めた(1)?(5)から、大切にしたいキーワードを拾い出します。例えば、「感謝」「スピード」「学び」「成長」...などです。これらの言葉は、上司から若手まで、お互いが常に意識することとして、チームで共有しましょう。

   以上の(1)~(6)を一枚の紙に書き出したものが『私たちのビジョン』です。「お客様本位のサービスを提供し社会貢献を目指す」といった組織の理念を、自チームにより具体的な内容に落とし込んだビジョンは、日々の行動の土台となることでしょう。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著「本物の上司力~『役割』に徹すればマネジメントはうまくいく」(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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