次世代型原子炉、まだ技術が発展途上
しかし、原発新増設や既存の原発の再稼働には多くの課題と問題点が山積みしている。そもそも政策の大転換を実現できるのか、疑問が多いと指摘するのは東京新聞「原発政策転換 実現に疑問」である。
同紙によると、主な課題は以下の3点だ。
(1)次世代型原子炉、技術が未確立
今回、新増設を検討するのは既存の原発ではなく、事故対策が改良された原発や小型原子炉などの次世代型。だが、これら次世代型の多くは海外で実証試験などの段階で、商業発電として確立したとは言いがたい。
ある電力会社関係者は「既存原発の再稼働もままならない状況なのに、新型の原子炉を建設する余力はない。まずは今の原発の運転を重ね、技術力を戻すのが先だ」と首をかしげた。
(2)既存原発の運転期間延長、規制委が地震を懸念
政府は、原発の運転期間を原則40年から60年超への延長を求めているが、それには法改正が必要になる可能性も。原子力規制委員会規制委の更田豊志委員長は8月24日の記者会見で「技術的に詳細な議論が必要」と述べた。
米国では80年の運転が認められているが、更田委員長は「日本は地震が多く、海外に引きずられるべきではない」とくぎを刺した。
(3)既存原発の再稼働、地元に強い反対論
政府は、原発の新規制基準に適合したものの、再稼働にこぎつけていない5原発7基を来年再稼働させる目標を設定した。そのうち、東電柏崎刈羽原発(新潟県)はテロ対策の不備を受け、原発推進に前向きな自民党県議からも「東電に運転してほしくない」との声が漏れ、不信感は根強い。
日本原子力発電東海第二原発(茨城県)は、避難計画の策定が義務づけられる30キロ圏内に全国最多の90万人超が住み、計画作りが難航を極める。策定できたのは、14市町村のうち5市町だけ。そのうえ、水戸地裁は昨年3月、避難計画の実効性に問題があるとして運転差し止めを命じた。
こういったありさまで、政府目標の1年余りのうちに両原発が稼働できる可能性はほぼない。