日傘を持つ男性が増えている。女性の持ち物という印象が強い日傘だが、厳しい暑さが続く中、「日差しを避けて身を守るため、やむを得ず使い始めた」という人が多い。
最近の調査では男性の「メンズ日傘肯定派」は約8割に上るという結果もあり、日傘を使う男性はさらに増加しそうな勢いだ。
百貨店「売り上げは前年比で数倍」、バリエーションも豊富
東京都内の百貨店ではお盆期間中も、父親や夫の日傘を選びに訪れる家族や夫婦が多く見られた。デザインだけでなく、紫外線をカットする「UVカット」の機能を丹念に調べる人たちが多いという。
都心のある老舗百貨店では「7月以降、メンズ日傘の売り上げは前年比で数倍も伸びている」と話すなど、多くの店では売れ行きは好調だ。売り場では、メンズ日傘を大々的にPRする動きも目立っている。
男性用の日傘は10年ほど前なら、大手百貨店でも数点しか置かれてなく、使う男性もほとんどいなかった。しかし、最近は長傘や折りたたみ傘など品ぞろえが増えている。
通勤や通学時に使えるシックなデザインの傘のほか、普段使い用のおしゃれなチェックやストライプ柄の傘などバリエーションも豊富になっている。
選べるアイテムが増えたことで、客をさらに引きつけている状況だ。
男性の意識も変化、日傘に「ためらいない」
男性の日傘が広がっているのは、やはり夏季の厳しい暑さが大きな原因といえる。
近年は最高気温が35度以上の「猛暑日」が珍しくなくなった。猛暑日の平均年間日数は1990年代半ば以降増加しており、最近30年間ではそれ以前と比べ、3倍以上も増えているという。
もっとも、日傘を使う効果は決して小さくない。
日傘をさせば、頭部の体感温度が4~9度も下がるという調査結果も出ている。健康を脅かすような暑さの中、熱中症などを防ぐ手軽なアイテムとして、日傘が見直されているようだ。
これまで日傘は、どちらかといえば、女性の「専売特許」といったイメージだったが、男性の意識も変化している。
男性専門の医療脱毛専門院「メンズリゼ」が2022年4~5月、10~40代の男性660人を対象に行ったアンケート調査によれば、男性が日傘をさすことについて、「肯定派」は79.7%にのぼった。このうち10代では89.6%と9割近くになり、日傘をさすことにためらいをもたない若者が広がっていることがわかる。
最近、日傘を買ったという東京都在住の50代の男性は「顔のしみが気になったことがきっかけだった」と購入の経緯を説明する。
メンズ日傘が拡大している背景には、暑さや熱中症対策だけでなく、紫外線を避けて肌のダメージを抑えたいという、美容意識の高まりも関係しているようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)