中小企業が競争力を持つ時代が来る
さて、サブタイトルの「大企業の中小企業化」だが、多品種少量生産の時代になり、独自のデバイスを開発する中小企業が競争力を持つというのだ。
たとえば、自動車産業も電気自動車(EV)が普及すれば、「組み立て産業」化し、他業種からの参入も可能になるという。また、経費の削減のため、大企業は部署をどんどん子会社化している。
これからの20~30年は「大企業の中小企業化」が進み、ある臨界点に達したところで再び「中小企業の大企業化」が始まる、と考えている。資本主義はそうやって進化しているように見えて、同様のことを繰り返し、反復しつつも進化しているというのだ。
「まやかし」と言えば、「社外取締役のウソ」という項目で、かたちばかりの社外取締役を厳しく、批判している。「社外取締役で業績は上がったのか検証せよ」とも。ガバナンス(企業統治)強化に取り組んでいる姿勢を見せるための「飾りつけ」に多額の報酬を払っているケースが少なくないという。
駐中国大使を経験した「中国通」だけに、米中関係にも1章割いている。そこでの結論は、「米中は共存共栄せざるを得ない」。だから、日本は「経済安全保障の視点からずる賢く立ち回れ」というものだ。
Z世代への期待も語っている。
タテ型社会を変え、上も下もない、自由と公平な会社、社会をつくってほしい、とエールをおくっていた。コロナ禍はそうした異なる社会を構築するきっかけにならないか、千載一遇のチャンスに遭遇している、と見ている。
会社経営と読書で鍛えた独自の視点が展開されている。「変わる勇気と覚悟を持った組織だけが生き残り、これからの世界を支配する」という丹羽さんの結論は、読む人に奮起を促すはずだ。
(渡辺淳悦)
「会社がなくなる!」
丹羽宇一郎著
講談社現代新書
924円(税込)