「ステークホルダー資本主義」への転換進む
このような本質的な思考回路の持ち主である丹羽さんには、「会社」にまつわるさまざまな「まやかし」が許せない。
第1章では、「SDGs」「ESG」の看板にだまされるな、と警告している。「クリーンなエネルギーを」「脱炭素」などのコミットメントを掲げる会社が増えているが、その多くはお題目に終始し、具体的な活動に落とし込んでいる会社は少ない、と見ている。
1999年頃、環境対策に積極的な企業を株式投資で応援する「エコファンド」がブームになったが、尻すぼみになったという。ようするに、これまでやってきたことが「SDGs」「ESG」と呼び名が変わっただけだ、と冷ややかだ。
この章では、資本主義の変化についても論じている。
アメリカでも株主第一主義を見直す動きが出てきたそうだ。そして、顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主、すべてのステークホルダーに利益をもたらすのが企業の目的だとする、「ステークホルダー資本主義」への転換が起ころうとしているという。
丹羽さんは、実はステークホルダー資本主義ははるか以前に存在していた企業モデルで、アダム・スミスの経済思想にすでに見てとれる、と指摘している。
また、日本には近江商人に受け継がれている「三方よし」(買い手よし、売り手よし、世間よし)の商売哲学があり、CSR(企業の社会的責任)の視点を先取りしていた、と考えている。