非常に強いタカ派色を打ち出す可能性は低い?
日本のエコノミストたちの見方はどうか。
「パウエル議長は前回の汚名を晴らすためにタカ派色の強い発言をするのでないか、という見方が金融市場で広がっているが、疑問だ」とするのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「金融市場の注目が高まるジャクソンホール」(8月23日付)のなかで、非常に強いタカ派色を打ち出す可能性は低いとする理由をこう述べている。
「FRBは物価高に対する強い警戒を維持しており、景気を犠牲にしても物価高を定着させないという強い覚悟を持っていることは確かである。パウエル議長が今回のジャクソンホールで、物価高を警戒する姿勢を強調する可能性は相応に高い。
他方で、フェデラルファンズ(FF)金利が中立とみられる2.25%~2.5%の水準まで引き上げられたことで、利上げの出遅れ感はかなり解消された、とFRBは考えているだろう。そのため、後れを取り戻すための大幅利上げ姿勢から、経済指標次第で利上げ幅を調整する姿勢へと、FRBの方針が7月FOMC(米連邦公開市場委員会)で修正されたことは確かである。
また物価高騰が最悪期は過ぎたことを示す指標や、景気の減速を示す指標も確認され始めている。中国や欧州など海外の景気も下振れが見られ始めている。
これらの点を踏まえると、パウエル議長が非常に強いタカ派色を打ち出すことで、既に進んだ期待のさらなる修正を意図するかどうかは疑問である」
ただし、9月20・21日の次回FOMCでの利上げ幅決定までには、8月分雇用統計、消費者物価統計など重要な経済指標の発表が続く。だから、現時点で利上げ幅を判断するのは難しい。したがって、パウエル議長講演後も、9月のFOMCでの政策対応を睨んで市場の観測はなお揺れ動く、と木内氏は結んでいる。