世界同時景気後退が懸念されるなか、注目の会議が今週末、米国で開かれる。「ジャクソンホール会議」だ。
そこで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が何を発言するのか、世界中の金融市場関係者が固唾を飲んで見守っている。
いったいなぜか。世界経済はどこにいくのか。エコノミストたちの予想と分析を読み解くと――。
金融市場を揺るがすサプライズが起こる因縁の会議
通称「ジャクソンホール会議」は、米カンザスシティー地区連邦銀行が毎年8月下旬にワイオミング州ジャクソンホールで開く経済シンポジウムだ。8月25日から27日の3日間にわたって開かれる会議には、各国中央銀行トップや経済学者などが集い、26日にパウエルFRB議長の講演が予定されている。
金融市場が同会議のパウエル議長の発言に注目するのは、歴代FRB議長が金融政策の新たな方針について、重要なメッセージを発信する場になっているだけではない。過去に、金融市場を揺るがすサプライズがたびたび起っているからだ。
たとえば2010年、ベン・バーナンキFRB議長(当時)が突然、量的金融緩和策の第2弾実施を示唆したため、世界の金融市場に大混乱を与えた。日本銀行の白川方明総裁(当時)が会議を中座して緊急帰国、臨時の金融政策決定会合を開いたほどだ。
パウエル議長自身にも苦い教訓がある。昨年(2021年)の会議で、同年春から加速傾向を示してきた物価上昇率の高まりを「一過性のものにとどまる可能性が高い」と断じて利上げに慎重な姿勢を示した。
この発言が後に「物価上昇のリスクを見逃し、FRBの利上げが遅れることにつながった」と強い批判を浴びことになった。そのこともあって、FRBは今年3月からハイペースで利上げを進めているわけだ。
さて今回は、パウエル議長の講演にサプライズはあるのだろうか。米国の経済専門メディアの報道を見ると――。
ロイター通信(8月23日付)「アングル:米株、ジャクソンホール無風通過へ オプション市場予想」では、「この会議では誰も大きなサプライズを予想していない」というアナリストの分析を紹介している。
一方、ブルームバーグ(8月22日付)「パウエルFRB議長のジャクソンホール講演、市場の期待修正の好機に」では、「9月の利上げ幅を示唆することはおそらく控える見通しだ」という無風に収まるとの見方と、「議長はおそらく強硬路線を維持するだろう」という、やや波乱を予想する2つの見方を示した。