経営再建の行方は?...東洋経済「東芝の末路」、ダイヤモンド「軍事ビジネス&自衛隊」、エコノミスト「鉄道復活の条件」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

株式非公開化となるのか?

   「週刊東洋経済」(2022年8月27日号)は、「東芝の末路」と題した特集を組んでいる。同誌では、ファンド株主に翻弄され、株式非公開化への一歩を「踏み出した」として、東芝の近況をレポートしている。

   異例の公募で始まった東芝のスポンサー選考は、年内には結論が出る見通しだ。

   現在候補に残っているのは産業革新投資機構(JIC)、米ベインキャピタル、英CVC、カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメントの4陣営で、国内勢が1、海外勢が3という構成だ。このうち、ブルックフィールドが唯一、東芝の上場維持を前提とした提案をしている。

   海外勢にとっては、外国為替及び外国貿易法の規制の問題がある。国内勢のJICにはそうしたハードルはないが、資金面の問題があるという。時価総額2.3兆円の東芝の株を買い集めるには3兆円近い資金が必要になると見られ、官民ファンドのJICには荷が重いようだ。

   同誌は「最終的な提案の前に、ファンド同士が連合を形成したり、パートナーを組みかえたりする可能性が出てくる」と予想する。

   昨年4月の突然の社長辞任や会社の分割案、そして、株式非公開化のカウントダウンと迷走を続ける東芝の動きを読み解いている。しかし、外部の人間にとっての一番の関心はやはり、業績だろう。意外なことにこれが悪くないのだ。

◆どの事業部も黒字で好調

   現在、6つの主要事業部がある。2021年度の売り上げが多い順に、「デバイス&ストレージ」(パワー半導体など)8598億円、「インフラ」(水処理、鉄道など)6547億円、「ビル」(エレベーターなど)5990億円、「エネルギー」(発電など)5590億円、「リテール&プリンティング」(POS端末など)4532億円、「デジタル」(ITシステム)2306億円となっている。

   2022年3月期の決算は増収増益。事業部別の利益を見ても、現在残っている事業はすべて黒字だという。だが、安定したビジネスが多いものの、成長の種は心もとないのが東芝の現状だ、と指摘している。

   今年3月に社長CEOに就任した島田太郎氏は、データ事業を柱としてしく新経営方針を打ち出した。

   島田氏の経歴が興味深い。1966年生まれの55歳。90年に甲南大学理工学部を卒業し、新明和工業に入社。航空機の設計業務に携わった。その後、米ソフトウェア企業に転職。同社を買収した独シーメンスの日本法人で要職を歴任。2018年に当時の社長に引き抜かれる形で東芝に入社。東芝デジタルソリューションズの社長を務めるなど、東芝のデジタル戦略を率いてきた。

   関係者たちが語る社内事情によると、不正会計発覚後、30~35歳になる世代が会社を去り、「おじさんと20代」という編成になっている部署が多いそうだ。その一方で、転職した人たちが「やっぱり東芝がいい」と戻ってくる流れもあるという。

   人手の足りない部署が、辞めた人を受け入れる「カムバック採用」に、会社として力を入れているというのも面白い。グループ社員が約12万人もいるという東芝。意外なことに、電機業界では一人勝ちと言われる日立に負けず劣らず社員の給与もいい。平均年収は日立の896万円に対し、東芝は892万円と遜色はない。

   しかし、日立の時価総額は6.4兆円。対する東芝は2.3兆円と差が開いてしまった。あるOBは、「言われたままに従う」企業文化が、顧客にも「できないことはできない」という日立との差を生んだ、と話している。

   そうした企業文化に染まっていない、島田社長に期待する声も大きいようだ。

防衛予算倍増は実現するか?

   「週刊ダイヤモンド」(2022年8月27日号)の特集は、「大激変! 軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦」。

   ウクライナ戦争、そして現実味を帯びてきた台湾有事......。自民党は、防衛費をNATO(北大西洋条約機構)並みのGDP(国内総生産)比2%水準――すなわち、10兆円規模に引き上げる方針を打ち出した。

   2022年度防衛費予算は約5.4兆円でGDP比は0.96%だから、ほぼ倍増となる。そんなことが可能なのだろうか。

   降って湧いたチャンスを前に、陸海空の自衛隊や軍事関連企業が争奪戦を繰り広げようとしているという。

   防衛費のうち42%は人件・糧食費で占められている。約23万人いる自衛隊員の給与や退職金、食事に充てられている。では、予算激増でうるおうのはどこか?

   同誌では、防衛省契約高ランキング上位20社リストを挙げ、1位三菱重工業、2位川崎重工業、3位富士通、4位三菱電機、5位NEC、6位東芝インフラシステムズ......これらの企業のほか、炭素繊維技術を持つ帝人や東レなどを挙げている。

   ランキングにはおなじみの企業が並んでいる。だが、「宇宙・サイバー・電磁波(宇サ電)」という新しい戦闘領域が加わり、新興企業の台頭もありそうだ。

◆軍事事業から撤退する企業も

   防衛予算が増えるという流れの中で、軍事事業から撤退する企業があることを伝えている。

   自衛隊向けの主要航空機の電装品や部品を生産している島津製作所が撤退の意向を防衛装備庁や取引先メーカーに伝えたそうだ。だが、島津が供給する部品は、一つでも欠ければ航空機がつくれなくなり、メンテナンスにも支障が出るため、紆余曲折がありそうだという。

   実は、自衛隊向け装備品の価格は独特の入札ルールで決められており、企業にはあまりメリットがない。

   実際、日産自動車が固体燃料ロケットをIHIに事業譲渡するなど、防衛ビジネスから撤退した企業は少なくない。ある種の「ボランティア精神」で事業を継続してきたが、「もはやもうかりもしない防衛事業はやってられない」(大手防衛企業首脳)という声を紹介。国内防衛産業の弱体化が危惧される。

   防衛費が大幅に増えようとしているのに、肝心の防衛産業に撤退の動きがあるというのは驚きだ。どこに活路があるのか。同誌が防衛省や自衛隊などと直接取引している企業の実態を調査したところ、減収企業が増えていることがわかった。

   防衛省・自衛隊と取引先企業は長年の蜜月関係にあり、競争原理が働かないようだ。活路は「部品輸出」と結論づけているが、武器輸出に否定的な世論もあり、そう簡単ではない。

   そもそも防衛費をNATO並みのGDP比2%水準(10兆円規模)にするという方針は、正式に決まったわけではない。大きな掛け声の陰で、先細りしている防衛産業の実態が浮かび上がった。

鉄道需要はコロナ禍前の8割までしか回復しない

   「週刊エコノミスト」(2022年8月30日号)の特集は、「鉄道150年 復活の条件」。日本の鉄道は、この秋に150周年を迎える。しかし、コロナ禍と人口減少で鉄道業界は深刻な打撃を受けた。回復を図る動きをまとめている。

   明るい材料としては、9月に西九州新幹線武雄温泉(佐賀県)~長崎間の開業が控えている。ほかに、23年3月までには、相鉄・東急新横浜線が開通し、相鉄線と東横線がつながる。渋谷から新横浜まで乗り換えなしで行けるほか、相鉄線沿線から渋谷や目黒を経由して、複数の地下鉄路線へ接続できるようになる。

   福岡では市営地下鉄七隈線が天神南駅から博多駅まで延伸される。また、宇都宮ライトレールも今年度中の開業を予定しており、宇都宮市東側の交通の利便性が大きく向上する。

   それでも、鉄道需要はコロナ禍前の8割までしか回復しないというのが鉄道業界の共通認識になりつつあるという。地方の鉄道需要の減少は、コロナ禍以前に、人口減少、地方の経済の衰退によるもので、鉄道会社で対応できる範疇を超えている、と指摘する。

   これまで公表してきたJR北海道、JR九州に加え、今年に入って、JR西日本とJR東日本が路線別の経営状況を公表した。ただちに路線廃止の議論に入るものではないが、国や自治体が鉄道を地域でどう位置づけるかが求められる、としている。

   鉄道網を維持するためには、鉄道を観光資源ととらえ、乗ること自体が目的となるように魅力を高めていく必要がある、という論考を寄せているのは、大塚良治・江戸川大学准教授だ。

   一例として、アニメ「ガールズ&パンツァー」を利用した茨城県大洗町と鹿島臨海鉄道の試みなどを紹介している。こうした努力を続けるとしても、輸送密度による存廃基準(輸送密度1000人未満がバス転換の目安)からは逃れられない。

   しかし、実際には野岩鉄道会津鬼怒川線(福島県~栃木県)や会津鉄道会津線(福島県)など、輸送密度1000人以下でも存廃議論が起こらない路線もある、と指摘する。両社線ともに、会津地方と首都圏を結ぶ重要路線と位置付けられているためだ。

   大塚氏は「鉄道存続の論理はいかようにも作り出せることを示している」として、ローカル線を存続させるための新しい論理を作り出すことを提案している。

(渡辺淳悦)

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