「絶対に儲かる暗号資産があるよ。しかも、知人を紹介すれば紹介料まで入って一石二鳥!」......
SNSなど知り合った見知らぬ相手からの、こんな甘い誘いに乗って400万円以上もだましとられる人が急増しているため、国民生活センターは2022年8月4日、「SNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル-その話、うのみにしないで-」という警告リポートを発表した。
会社の同僚や友人もうかつに信用するな、と注意を呼びかけている。いったい、どんな手口か?
「手数料」「税金」「保証金」を次々に高額請求されて...
国民生活センターによると、暗号資産の投資話をめぐる相談件数は近年急増しており、2021年度は6350件に達した。契約当事者を年代別にみると、40歳代がもっとも多く1189人、次いで30歳代(1030人)、50歳代(1006人)、20歳代(944人)と、働き盛りに多いのが特徴だ=図表1参照。
しかし、年代別の被害金額(既支払金額)の平均額をみると、70歳代と60歳代がもっとも多く433万円(同額)、次いで50歳代(426万円)、40歳代(415万円)、80歳代以上(392万円)と、高齢になるほど多くなっていく=図表2参照。それだけ、投資に使える預貯金が多いということなのだろうか。
最近は、「SNSやマッチングアプリで知り合った相手に勧誘されて送金したが、出金できなくなった」とか、友人や知人から「暗号資産は絶対に儲かる。人を紹介すれば紹介料も入る」と勧誘されお金を預けたが、返金されないといったケースが増えている=イラスト参照。
こんな事例が代表的だ。
【事例1】SNSで知り合った外国人女性から指示されたアプリ内で暗号資産の取引をした。出金を希望したら高額な費用を請求された
画像投稿のSNSで外国人女性と知り合った。無料通話アプリのIDを交換し、連絡を取り合うようになった。「暗号資産への投資で儲けられる」と勧められ、指示に従って国内の暗号資産交換業者に自身の口座を開設し、330万円をクレジットカードで決済し入金した。暗号資産の取引をやったことはなかったが、女性の指示に従い、海外業者のアプリをスマホにダウンロードした。
アプリ内に自身の口座を開設し、国内の暗号資産交換業者の口座から全額送金した。利益が出たので引き出したいと女性に伝えると、税金や保証金を立て続けに請求され、合計約170万円をクレジットカードで支払った。
さらに、「残高の8%の50万円を手数料として払うように。これが最後で、すべて国際基金の規定に基づいての請求だ。支払えば約600万円を口座に入金する」と連絡があった。業者のアプリに、運営業者情報は書かれていない。女性の連絡先は携帯電話番号と無料通話アプリのIDのみだ。どうしたらよいか。(2021年11月・50歳代 男性)
「一緒にやらないか」と誘った同僚が手のひら返し
【事例2】SNSで知り合った男性から「暗号資産でもうかる」と言われ投資金を振り込んだが、出金できない
SNSで知り合った男性から「暗号資産で儲かる」と言われ動画を紹介された。「今しかない。投資の原資として120万円を振り込むように。ATMの振込限度額を窓口で変更する必要があるが、自動車を購入する資金であると伝えるように」と男性から指示され、2日に渡って120万円を振り込んだ。振込先の名義は会社名義だったが、それぞれ違う名義だった。
指示されたサイトに私の残高情報が出ているが、120万円が約300万円になっているのに出金できない。相手の住所や電話番号は不明でメールで問い合わせたが、「手続きに時間がかかる」としか言わず、その後、連絡がとれなくなった。(2021年8月・40歳代 女性)
【事例3】マッチングアプリで知り合った男性から勧められて暗号資産への投資をした。出金を希望したら高額な税金を請求された
マッチングアプリで知り合った男性に、暗号資産の投資を勧められた。SNSのメッセージで指示を受けながら、最初に国内の業者のアカウントを作成し、暗号資産に交換した後、交換した暗号資産を今度は海外の業者で別の暗号資産に交換した。するといくらか儲けが発生し、自分の銀行口座に入金があった。
その後も金額などを指定され次々と投資したが、さらに高額な投資を勧められたので「お金がない」と伝えると、「消費者金融で借りるように」と言われたため、借り入れをして投資を行った。「もう出金したい」と伝えたが、「海外の業者から出金するには200万円課税される」と言われ、税金を請求された。これまでに500万円以上投資したが、どうしたらよいか。(2022年4月・30歳代女性)
【事例4】同僚に暗号資産のAI投資で儲かると誘われお金を手渡した。同僚に返金を求めても返金されず、連絡も取れない
職場の同僚に「AIが判断して暗号資産に投資するシステムで儲かっている。一緒にやらないか」と誘われた後、セミナーでも契約を促された。資金がないと言うと「消費者金融で借りてもすぐに返せる」と2つの消費者金融で借金するよう指示された。60万円を借りてそのまま同僚に手渡した。
最初は預けた60万円が運用で増えている画面をスマホで見られたが、最近ログインできず見られなくなった。同僚に「やめたい。返金してほしい」と伝えると「暗号資産に変えて返金する」などと言われたあと、返事が来なくなり、連絡が取れない。誰かを勧誘すると紹介料がもらえるという話は聞いていたが、自分は誰も入会させていない。返金してほしい。(2021年12月・20歳代男性)
あやしい業者かどうか、金融庁のサイトで確認しよう
このように、暗号資産をめぐるトラブルは次のような特徴を持っている。
(1)SNSやマッチングアプリなどで知り合った相手からの勧誘が多い。口座の開設や取引を勧められるケースが目立つが、相手の本人確認をすることが難しく、トラブルになった際の対応が困難になる。
(2)友人や知人からの勧誘がきっかけとなるケースもある。しかし、その友人知人も他の人を紹介すると紹介料が入るため勧誘している場合もあり、人間関係から断りづらいケースがみられる。
(3)暗号資産の取引口座やアプリ上では利益が出ているように見えていても、出金しようとすると、「手数料」「税金」「保証金」などの名目で高額請求されるケースが目立つ。
(4)国内の業者で暗号資産に交換した後に海外の無登録の業者で別の暗号資産に交換したケースにトラブルが頻発する。暗号資産交換業者は金融庁(各財務局)への登録が必要だが、多くの場合、海外業者の登録が確認できない。
国民生活センターでは、こうアドバイスしている。
(1)暗号資産の投資を勧める相手からの勧誘をうのみにしない。特に、SNSなどで知り合った面識のない相手からの勧誘は詐欺的な投資話だと疑うこと。友人知人からの暗号資産投資勧誘も、紹介料などの見返りを受ける目的で誘っている場合があり、きっぱりと断る。
(2)暗号資産を扱う業者のサイトやアプリで取引を行う場合には、その業者が暗号資産交換業の登録業者かどうかを金融庁のウェブサイトで確認する。このサイトには、過去に無登録業者として警告がなされた業者も掲載されている。
(3)暗号資産は価格の変動が大きく、急落して損をする可能性がある。たとえ、 取引相手が登録業者の場合でも、こうしたリスクと取引や契約の内容を十分に理解できなければ取引や契約をしないこと。
(福田和郎)