来年まで続く「値上げラッシュ!」4社に1社が再値上げ 「客先からいきなり通知文」「値上げしても経営悪化」...どうなるニッポン経済?

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   記録破りの猛暑に襲われているニッポン列島。今年は秋に入っても「値上げラッシュ」の猛威が収まるどころか、来年夏まで憂鬱なシーズンが続くという。

   帝国データバンクが2022年8月22日、「特別企画:企業の今後1年の値上げに関する動向調査(2022年8月)」を発表したが、値上げを実施済み・予定の企業は7割に達した。今年8月以降、来年9月までに値上げを予定している企業も3割を超えており、今後も物価高の「波状攻撃」に見舞われそうだ。

  • どんどんモノの値段が上がっていく(写真はイメージ)
    どんどんモノの値段が上がっていく(写真はイメージ)
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8月以降の1年以内に値上げする企業、3割

   日本銀行が2022年8月10日に発表した7月の「企業物価指数」は前月比プラス0.4%(前年比プラス8.6%)となり、17か月連続で前年同月を上回り、6月に続き過去最高を更新した。こうしたなか、企業で値上げの動きが収まらない。

   帝国データバンクの調査によると、自社の主な商品・サービスについて、2022年8月以降約1年以内に「値上げした/する予定」の企業(複数回答)は31.4%となった。今年4月から7月までに値上げした企業(同)と合わせると、「値上げ実施済み・予定」企業は69.6%と約7割に達した=図表1参照

(図表1)企業の値上げ動向(複数回答)(帝国データバンクの作成)
(図表1)企業の値上げ動向(複数回答)(帝国データバンクの作成)

   今年6月に実施した同様の調査と比べて、「2022年10~12月ごろに値上げ予定」の企業が7.4ポイントも上昇したから、今後もさらに増える可能性がある。

   一方、「今後1年以内で値上げする予定はない」企業は8.6%、「値上げしたいが、できない」企業も14.3%だった=図表1参照

   今後値上げする予定の企業を業種別でみると、特に化学品製造や食品関連が多かった。それぞれ業界内で40%台後半の高い割合だ。一方で、値上げしたいもののできない企業をみると、「運輸・倉庫」「情報サービス」「不動産」が20%台~30%台前半と多かった=図表2参照

(図表2)企業の値上げ動向(主な業種)(帝国データバンクの作成)
(図表2)企業の値上げ動向(主な業種)(帝国データバンクの作成)

「値上げのスピードが、円安の速さに追いつかない」

   それぞれ企業の声を聞くと――。

   まず、「値上げ実施済み・予定」と回答した企業は、こんな声に代表される。

「あらゆる資材が毎月のように値上げされている状況では、その都度、販売先に値上げ交渉していては間に合わない。とりあえず仕入価格の値上がり分を値上げして、様子を見るしかないという判断になった」(配管冷暖房装置等卸売)
「メーカーからいきなり値上げの通知文があるが、その都度値上げに対応している」(精密機械 器具卸売)
「商品ごとに値上げの時期が違うため、その都度価格に転嫁できるよう得意先にはお願いしている。ビール類など報道されている値上げはお願いしやすい」(酒類卸売)
「既存商品は値上げすることを認めてもらえないが、新商品については、原価計算を行い価格設定している。スーパー関係では既存商品の値上げは大手企業には認めてもらえるが、小規模事業者は値上げを提出した時点で商品が打ち切りになる」(米菓製造)
「値上げを受け入れてもらえるクライアントもあれば、値上げを受け入れないクライアントもある。感覚では6割くらいが値上げ済み」(印刷)
建築資材が高騰、マイホームの夢が遠のく(写真はイメージ)
建築資材が高騰、マイホームの夢が遠のく(写真はイメージ)

   しかし、値上はしたものの、経営的には苦しいところも少なくない。

「原材料や容器、運賃などの値上がりによって製造コストが大幅に上がったため、販売価格に転嫁した。ただし、販売先によっては競合他社の動向を見ながらなので転嫁できる幅が限られており、コストの値上がり分をそのまま転嫁できないケースも多い」(ゼラチン・接着剤製造)
「客先によって、円安でコストが上がった分をそのまま販売価格に転嫁できたが、一部商品については、値上げのスピードが円安のスピードに追いついていない」(乾物卸売)

といった悩みが聞かれた。

「他社と相見積を取られ、値上げすると契約取れない」

運賃値上げを荷主側に拒否されて苦しいという運送業界(写真はイメージ)
運賃値上げを荷主側に拒否されて苦しいという運送業界(写真はイメージ)

   一方、「値上げしたいが、できない」と回答した企業の声はこうだ。

「販売対象物が資源高などに直結していないため、消費者が納得しづらい」(個人教授所)
「物流費高騰と世間では値上げの材料にされているが、荷主は値上げの交渉に乗ってくれない運送会社の代わりはあるからと言われると交渉ができなくなる」(一般貨物自動車運送)
「食品運送業であるが、荷主企業も資材コスト等の上昇で値上げ要請を受け入れてもらえない」(一般貨物自動車運送)
「他社と相見積を取られることが多く、値上げすることで契約が取れないことが多い」(ソフト受託開発)
「賃料・共益費ともに契約によって決まっており、新型コロナの感染拡大で経営の厳しいテナントに改定の提案は難しい」(貸事務所)

   こうしたエネルギー価格や原材料費の高騰に加え、円安の加速が追い打ちになった結果、値上げを何度も繰り返すところも少なくない。

   今年1月から8月中旬までの値上げ回数を聞くと、「0回」が33.5%、「1回」が40.7%となった。また、「2回以上」が4社に1社の25.8%もおり、中には「5回以上」も3.8%いた=図表3参照

   企業からは、「仕入商品の値上がりにともない、その都度値上げを実施した」(塗料卸売、値上げ回数4回)といった声があがっていた。

(図表3)値上げ回数(帝国データバンクの作成)
(図表3)値上げ回数(帝国データバンクの作成)

   帝国データバンクではコメントしている。

「2022年8月以降に『値上げした/する予定』の企業は約3社に1社となり、4月よりすでに値上げを実施した企業と合わせると約7割にのぼった。(中略)一方で、値上げによる顧客離れに対する懸念などで企業の14.3%は値上げしたいが、できない状況にあった。また、『値上げはしているが、すべてが価格に転嫁できるわけではないので収益率は急速に悪化している』(動力伝導装置製造)といった声にあるように、すでに値上げした企業においてもコストアップ分すべてを販売価格に反映できていない状況がうかがえた」
高すぎてスーパーの買い物でも悩む(写真はイメージ)
高すぎてスーパーの買い物でも悩む(写真はイメージ)

   今後の動きについては、厳しくみている。

「エネルギー価格や原材料費などの上昇はとどまる気配を見せない。そうしたなか、為替動向の不透明感の高まりや深刻化する人手不足なども相まって、コスト増は続くと想定される。企業が厳しい状況を乗り越えるために適正な価格転嫁が急務となっており、今後も値上げの動きは続くであろう」

   調査は2022年8月12日~18日、インターネットでアンケートを行い、全国の1401社から有効回答を得た。うち大企業は175社(12.5%)、中小企業は1226社(87.5%)だった。

(福田和郎)

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