安定的に推移している「住宅ローン変動金利」
一方、住宅ローンの変動金利は、短期金利と連動しています。そのため、長期金利が上昇基調で推移しても一向に変化する様子はなく、過去5年程度を俯瞰しても、住宅ローン変動金利は0.4~0.5%の水準で極めて安定的に推移しています。
現状では、長期金利が最低でも2%前後の水準に達しなければ、短期金利の上昇は見込めません。ですから、日銀の金融緩和策が継続する限り、変動金利の上昇はないとほぼ断言できる状況です。
このように、住宅ローンの固定金利は比較的変動しやすく、変動金利は変動しにくいという、名称とは反対の表現が当てはまるのです。 固定金利は、借り入れた時以降は金利が変わらない、という意味であり、借り入れる以前のボラティリティ(値動き:ここでは金利変動リスクのこと)は相応に大きく、変動金利のボラティリティは極めて小さいと認識しておくべきでしょう。
住宅ローンの金利は、黒田総裁の任期満了後(2023年4月以降)も、基本的には金融緩和策の維持・継続によって、低位に据え置かれる公算が高いと考えられます。
しかしながら、住宅ローンを組むうえで唯一の不安要素は、この6~7月に発生した、「指し値オペ」でも回避しきれない長期金利の上昇です。
日銀が恣意的に金利上昇を抑制しようとしても、市場の反発で抗し切れない事態は、今後も発生する可能性はあります。
そのため、住宅ローンを申し込むのであれば、変動金利で借り入れるのが、現時点での最良の選択といえます(ほかには、元利均等ではなく、元金均等返済のほうが返済総額をやや低く抑えることが可能であることも知っておいてください)。
金利が上昇するかもしれないリスクに常にさらされている「住宅ローン固定金利」と、金融緩和下ではほぼ上昇することが想定できない「住宅ローン変動金利」。返済を継続するうえでは、金利水準自体も重要なポイントですが、その特性を理解したうえで、戦略的に住宅ローンの申し込みをしたいものです。
(中山登志朗)