青森県某所に、自給自足で暮らす家族がいます。家は廃材で建て、野菜類は畑で栽培! ガス、水道、電気の契約もなし! お金はほとんど使わない! にわかには信じられない生活ではないでしょうか。話題の「自給自足家族」の著書を紹介します。
「都会を出て田舎で0円生活はじめました」(田村余一 著、田村ゆに 著)サンクチュアリ出版
海水から塩をつくる!
人間の生命や健康を維持していくのはとても大事なこと。それが損なわれてしまうと、大変です。私たちの体は、食べた物でつくられています。体によいものを食べていれば健康になるし、逆に、悪い物を食べていれば不健康になるでしょう。とくに、現代人はミネラル不足だと言われ、サプリメントで補う人も少なくありません。
ミネラルはこの地球上の土や水、空気に含まれている微量の金属元素やハロゲン元素のことで、人間の生命活動を支えてくれるもの。もともと、自然の中に豊富に含まれているものです。現代、人間の生活環境は便利さを追求したあまり、自然をけっこうなレベルで「排除」しています。そのため、自ずとミネラル欠乏に陥ってしまいます。
「我が家はなるべく自然のものを生活に取り入れて生活するようにしていて、主たる食べ物を作り出してくれる家庭菜園も自然有機栽培。土の状態を自然に近いものにしている。いちいち土壌を調べることはしないけど、僕ら家族もニワトリたちも毎日元気に生きている。とっても大事なミネラル。なんと! 海水にはすべて含まれている」(田村さん)
「つまり、地球上の元素が全部入っているってこと。これってスゴくない? まさに母なる海だ。これをゲットしない手は無いぜってことで、我が家はわざわざ車で30分以上かけて太平洋までお出かけして海水を汲んでくる。ゴミの漂着や生活排水の影響が極力無さそうな、キレイな海藻類がゆらゆらしている磯の海水だ」(同)
田村さんは、その海水を自宅まで持ち帰り、あとは昔ながらの製法でひたすら加熱して水分を蒸発させ塩を取り出します。100リットルの海水から採取できる塩はおよそ3キロ。ニガリを取り除き、結晶化してきた純白の塩を取り出しています。取り出すときの喜びはまさに「ヒトシオ」です。
ハイブリッドな自給自足生活
「できあがった塩は主に我が家で作る調味料(塩麹など)や漬物、味噌に投入されて食卓を美味しくしてくれる。しかもミネラル豊富。うーん、ありがたい! こうした我が家の塩作りは冬の恒例行事。なぜなら毎日、薪ストーブで火を焚くから。調理以外のときは常に海水入りの寸胴鍋を薪ストーブの上に載せておく」(田村さん)
「徐々に海水の水分は蒸発して、乾燥しがちな冬のお部屋の加湿器に。海水が減ってきたら土鍋に移し替えて木ベラで析出してきた塩を掬い取る、部屋を暖めるついでの、一石二鳥の塩作り。もちろん、燃料は廃材だからタダ。毎年10キロ近く、ミネラルたっぷり、自家製の塩をゲットしております」(同)
自給自足ってどうやるの!? お金はどうするの? などなど、気になることはたくさんありますが、その答えはすべて本書に書かれています。また、文明の利器に一切たよらないわけではなく、パソコンやタブレットだって使い、朝は挽きたてのコーヒーを味わうといったハイブリッドな自給自足生活です。
読み進めていくうちに、そもそも何でこんな生活を選んだの? という夫婦の原点もわかってきます。何より魅力的なのは、「節約節約!」とか「しんどい!」といった息苦しさがないことです。みなさんも自給自足に挑戦してみませんか。
(尾藤克之)