大手アニメ制作会社でも進む二極化拡大
こんななか、アニメ制作会社の業績の二極化が拡大している。
2021年の制作企業1社当たり平均売上高は8億1800万円だった。うち「赤字」の企業は約4割の39.8%に達している。2019年をピークに減少に転じているが、元請け・グロス請け企業が小幅な減少にとどまったのに対し、下請けの専門スタジオの減少幅が大きいことが目立つ=図表2参照。
専門スタジオの2021年の平均売上高は2億8700万円で、前年(3億5600万円)から大幅に減少した。「増収」は 32.8%、「減収」は34.4%と、減収が増収を上回った。損益面では「赤字」の占める割合が42.6%に達した=図表3参照。
専門スタジオでは、2019年までの右肩上がりの時期に、アニメーターの積極採用や外注増加、3DCGなど最新設備の導入など、積極的な設備投資が行われてきた。しかし、コロナ禍の打撃を受け、全体的にアニメ作品の制作見送りや中止が発生し、元請け・グロス請けからの発注量が減少したことが響いた。
一方、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請け・グロス請け」の間でも、業績の好不調の格差が広がっている。
ポイントになるのは、冒頭で触れた「IPビジネス」だ。
自社IP(知的財産)を持つ大手元請けやグロス請けは、とくにコロナ禍で需要が拡大した動画ストリーミング配信などによるIPライセンス収入が利益に大きく貢献し、黒字や増益となった企業が多くみられた。
しかし、自社IPをあまり多く持たない中堅以下の元請けやグロス請けでは、制作本数の減収が打撃となった。また、アニメーター不足から、受注量を拡大できない企業も多かったのだ。
帝国データバンクでは「『新作頼み』の成長モデルに限界が露呈した」として、
「自社で有力なコンテンツを持たない中小アニメ制作、専門スタジオでは減収や赤字割合が拡大して過去最高となるなど、規模や制作工程によって経営動向の二極化はより進行・拡大している。とりわけ、いかに有力で展開しやすいIP を有するか否かで収益動向が左右される点は、独立などで新規に参入する制作企業の安定性を損なう要因になっている」
と、IPビジネスの問題点を指摘。そのうえで、
「海外の動画プラットフォーマーなどでは、高額な制作費を投下して長期にわたる共同制作を行うほか、アニメーター育成に向けサポートする動きもみられ、人的・資金面で国内アニメ制作会社との共存を目指す動きもある。質の高さを担保してきた、国内アニメ産業の発展を支えてきた『制作委員会方式』の良さを生かしながらも、アニメ制作会社のクオリティー維持や将来に向けた投資が可能とする、ヒット作の収益還元といった仕組みづくりが引き続き急がれる」
と、優れたアニメーターの育成などに力を注ぐべきだと訴えた。
(福田和郎)