岸田文雄政権が、原子力発電所の新増設や建て替えは想定していないという政府方針の転換に動き始めた。
経済産業省の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会が、「革新軽水炉」と呼ばれる最新技術を実装した大型原発(商用炉)について、2030年代に建設・運転開始する方向性を打ち出した。政府・与党が長年棚上げにしてきた原子力政策の本格的な見直しの端緒になる可能性がある。
新聞各紙で「次世代」の文字踊った「革新軽水炉」
「次世代原発、稼働へ工程表」(日本経済新聞2022年8月10日朝刊)など、7月29日と8月9日に開かれた原子力小委を報じる各紙紙面には「次世代」の文字が躍った。
今回、原子力小委がまとめたのは「革新炉開発の技術ロードマップ(工程表)の骨子案」。政府方針を決めたというのではなく、議論のための技術的な土台となる「中間整理」という位置づけだ。
じつは、「次世代」の表現は正確ではない。
現在、世界で多く使用されている軽水炉(普通の水=軽水を冷却材として使用)は「第3世代炉」に分類され、その先の技術として、軽水以外のものを使用するものが「第4世代炉」といわれる。
「革新炉」は必ずしも正確な定義があるわけではないが、現在の軽水炉の改良型である「革新軽水炉」を中心に、第4世代に該当するものも含めて、今回の工程表に掲載している。
多くの新聞がこれらをまとめて「次世代原発」と書いているが、正確には次世代は一部だけであることに注意が必要だ(ここでは、「次世代」の文言にはこだわらない)。