ウクライナをめぐる各国の対立...混乱回避への協調進まず
一方、世界の成長をけん引してきた中国は、「ゼロコロナ」政策に伴うロックダウンのほか、深刻な不動産危機で急減速するとみられている。中国の3.3%という今回の見通しの数字は、2020年のコロナ禍発生当初を除き、過去40年余りで最低の水準だ。
IMFは「経済の先行きリスクと不確実性の高まりを考慮し、代替シナリオに大きな重点を置いている」とわざわざ断って、より悲観的な「リスクシナリオ」も提示。世界全体の成長率が2022年に2.6%、23年に2.0%にまで下がる恐れがあるとして、具体的に多くの下振れ要因を挙げている。
とりわけ一番の懸念が、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格のさらなる上昇だ。
22年末までに欧州への天然ガスの供給が完全にストップすれば、ガス価格は約200%上昇。原油価格もロシアからの輸出が減少すれば、約30%上昇すると試算される。インフレが収まらずに金融引き締めが強化されると、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の同時進行)に陥るリスクもあると分析している。
また、先進国の金融引き締めが、新興国、発展途上国の債務危機を招きかねない点も指摘。ドル金利の上昇は新たな借り入れコストの上昇を招くだけでなく、ドル高・自国通貨安によって既存のドル建て債務の返済負担を増大させる。
財政破綻で政権崩壊に至ったスリランカをはじめ、多額の債務を抱えるアルゼンチンなどの途上国が債務危機に陥れば、IMFの緊急融資などが必要になる。
ウクライナをめぐる対立で、世界の主要20か国・地域(G20)の会議でも非難合戦が目立ち、世界経済の混乱回避に向けた協調が進まない。世界経済は、景気後退の崖っ縁に追い詰められているようだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)