ホテル業界「令和の四皇」とは?...ダイヤモンド「ホテル序列大激変」、東洋経済「変わる相続」、エコノミスト「電力危機に勝つ企業」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

危機を経て大きく変わった業界の構造、序列、勢力図

   「週刊ダイヤモンド」(2022年8月20日号)の特集は、「ホテル序列大激変」。コロナ禍で苦しんでいたホテル業界では、再び開業ラッシュが始まった。危機を経て大きく変わっていた業界の構造、序列、勢力図をレポートしている。

   日本のホテルでは長らく、「帝国ホテル 東京」「The Okura Tokyo(旧・ホテルオークラ東京)」「ホテルニューオータニ」が「御三家」と呼ばれ、別格の地位にあった。

   1990年代には外資系ブランドの「パークハイアット東京」「フォーシーズンズホテル椿山荘東京(現・ホテル椿山荘東京)「ウェスティンホテル東京」が「新御三家」と呼ばれた。

   さらに2000年代の第2次進出ラッシュでは、「マンダリンオリエンタル東京」「ザ・リッツ・カールトン東京」「ザ・ペニンシュラ東京」が「新々御三家」と呼ばれたりもした。

   そして今、「令和の四皇」と呼ばれるような存在にあるのが、不動産ディベロッパーの三井不動産と森トラスト、世界最大のホテル運営会社である米マリオット・インターナショナル、日本の大手運営会社である星野リゾートだという。

   同誌は、その動きを紹介している。

   JRグループでは、米マリオット・インターナショナルとの提携ラッシュが起きている。JR東海は、名古屋駅前でマリオットブランドのホテルを成功させた。一方、JR東日本のホテル「メズム東京」は同社の独自ブランドであり、JR西日本も独自ブランドのホテルを24年に開業する。だが、両社はマリオットの「オートグラフコレクション」というソフトブランドに加盟した。マリオットの世界的な「送客ネットワーク」に期待しているからだ。

   JR九州は、長崎駅前に23年、「長崎マリオットホテル」を開業する予定。JR北海道も札幌駅前でマリオットの最高級ホテルの開業を計画しているという。

◆不動産ディベロッパーがホテル市場で主役に

   三井不動産と森トラストにとって、マリオットは親密なパートナーだ。森トラストは27軒のホテルを展開しており、そのうち15軒がマリオットブランドだ。

   都市の再開発でラグジュアリーホテルは重要アイテムになっている。ホテルを誘致すると容積率が緩和されたり、開発エリア全体の価値向上につながったりするからだ。

   だから、不動産ディベロッパーは現代のホテル市場で主役になりやすいが、直営や自前ブランドに固執しない。

   三井不動産は帝国ホテルの筆頭株主になり、「帝国ホテル 東京」の建て替えも含めた一帯のエリア開発を主導。さまざまな再開発で外資系ホテルを誘致するなど、立ち回ってきた。一方で、19年開業の「ハレクラニ沖縄」など直営も展開。ハレクラニ沖縄は「休暇で泊まりたいホテルランキング」で3位にランクインした。

◆開業ラッシュの星野リゾート

   攻勢を強める外資系のライバルとなり得る、数少ない日本のホテル専業が星野リゾートである。

   日本では22年に10軒を新規開業し、米国本土で温泉旅館を計画しているという。

   直予約が多いのが同社の特徴だそうだ。エージェントなどから手数料を取られないので収益率が高い。「オンラインの集客システムが優れている企業が最後に勝つ」と星野佳路代表は話している。

   外資系ファンドが電鉄系ホテルを積極的に買収している実態も詳しく紹介している。

   ランキングでは、「これから開業するホテルで泊まりたいホテル」に注目した。1位は2026年京都市・祇園に開業する「帝国ホテル 京都」、2位は星野リゾートが今年8月に開業する温泉旅館「界 由布院」、3位は「ブルガリホテル東京」。トップ10のうち7軒が外資系ブランドだ。

   コロナ禍が収まり、インバウンドが再開したら、多くの外国人観光客が泊まるのは、どんなホテルだろうか? それを見越した競争がすでに始まっているようだ。

最高裁で否定された高額のマンション節税

   「週刊東洋経済」(2022年8月13・20日合併号)は、「変わる相続」と題した特集を組んでいる。高額のマンション節税は裁判で否定され、毎年の生前贈与はいつまで続けられるか不透明だという。

   今年4月、最高裁が下したマンション節税をめぐる2件の判決が衝撃を与えたという。相続人がはじいた相続財産の評価額を「低すぎる」として、国税当局が億単位の追徴課税を求めた。納得できない相続人が提訴したが、最高裁は国税当局の処分を適法と認めた。

   共通しているのは、融資を行った銀行の内部文書を国税当局が証拠として提出し、不動産購入が明らかな相続税対策だと裁判所が認めた点だ。

   1件目の訴訟では、三菱UFJ信託銀行で、不動産融資に際し、行内で回覧された稟議書に「相続税対策のため不動産購入を計画。購入資金につき、借り入れの依頼があったもの」という記載が、国税当局の有力な証拠になったようだ。2件目の訴訟でも、融資をした千葉銀行の「コンタクト履歴」が証拠になった。

   内部文書を国税当局につかまれる事態が増えれば、銀行は営業姿勢の転換を余儀なくされそうだ、と予想している。

   税理士の清三津裕三氏が、マンション節税の「線引き」について、まとめている。

   ダメなのは「相続税の軽減を主たる目的で行っていること」。裏返せば、不動産の取得が、自宅としての利用や不動産賃借を含む事業での利用など、経済合理性があって、副次的に相続税の軽減につながるケースは、原則該当しないと考えられる、としている。

   また、不動産の購入金額の大小は直接影響しないが、被相続人の資産に比べ、不相当に大きな金額の投資は「相続税対策が目的」と見なされやすくなるおそれがある、と警告している。

   「暦年贈与が廃止される?」との観測が広まったのは1年半前だ。もらった金額が年間110万円の基礎控除(非課税枠)の範囲内なら贈与税がかからない。毎年110万円を親が子に贈与している家庭も少なくない。

   だが、21年度税制改正大綱の記載がきっかけで、暦年贈与が廃止されると思った関係者もいた。結果として、本格的な議論は起こらず、22年度税制改正大綱にも具体的な記載はなかった。

   現在、贈与を特定の目的に使える、3つの非課税制度がある。「教育資金」「結婚・子育て資金」「住宅取得等資金」だ。これら3つの非課税制度はいずれも、高齢世代から若年世代への資産移転を促進するために設けられた。

   しかし実態は、富裕層の資産移転にも利用されており、「格差の固定化につながる」という批判もある。3つの制度は23年中に適用期限を迎える。存続するのは住宅資金だけか、という見方を紹介している。

   贈与については一昨年来、さまざまな憶測が流れてきた。いまだ結論は出ないが、公平性を高めるという流れは止めようがないようだ。

さまざまな「太陽光発電」ビジネスの現在地

   「週刊エコノミスト」(2022年8月23日号)の特集は、「電力危機に勝つ企業」。電力不足の中で、ピンチをチャンスにしようという企業の取り組みを追っている。

   太陽光発電ビジネスが大きく変わろうとしている。

   2012年に施行されたFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)により、日本の再エネは大幅に増加した。しかし、再エネが増加すれば、再エネ賦課金も際限なく上昇するため、買い取り価格は毎年徐々に引き下げられてきた。

   FITでは電気の需要に関係なく発電することになるため、発電事業と電力市場をむすびつける仕組みとして、22年4月からFIP制度が導入された。FIPは、FITのように買い取り価格を一定にするのではなく、補助額(プレミアム価格)を一定にする制度で、市場価格が高い時に電気をたくさん売ろうというインセンティブが働く。

   こうした制度とともに、PPA(電力購入契約)による太陽光発電ビジネスが広がりつつある。

   PPAとは、発電事業者と電気の買い手企業との間で結ぶ、電力購入契約のこと。企業の敷地内に太陽光発電設備を設置する「オンサイト型PPA」という事業モデルが普及している。送電線を利用せずに再エネ電気を受けるものだ。

   もう1つ、遠隔地に設備を設置し、送電線を通じて電気を供給する「オフサイト型PPA」ビジネスも登場しつつある。

   FIP制度が導入され、電力の市場価格高騰を背景に経済性が出てきたという。NTTアノードエナジー社が千葉県内に設置した太陽光発電の電気を、セブン&アイ・ホールディングスの商業施設に供給している例を紹介している。

   さらに、「バーチャルPPA」というビジネスモデルも登場。発電した再エネ電気は市場に売り、その環境価値(非化石証書)だけを企業が買うという仕組みだ。今後さまざまなPPA事業が展開されると予想している。

   脱炭素の政策に詳しい諸富徹・京都大教授は「ピンチはチャンス。日本は今、大きな社会の構造転換を狙えるとば口にいる」と話している。炭素税などの導入によって、産業構造の転換を促すこともできるという。

   今回の電力危機の背景には再エネが急速に拡大し、既存の火力発電所の収益が悪化したため、老朽火力の休廃止が加速していたことと、原発の再稼働がうまくできなかったことを指摘している。

   かつて70年代のオイルショックを乗り越えて日本のメーカーは成長した。今、新たな挑戦者が生まれるのか、注目したい。

(渡辺淳悦)

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