さまざまな「太陽光発電」ビジネスの現在地
「週刊エコノミスト」(2022年8月23日号)の特集は、「電力危機に勝つ企業」。電力不足の中で、ピンチをチャンスにしようという企業の取り組みを追っている。
太陽光発電ビジネスが大きく変わろうとしている。
2012年に施行されたFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)により、日本の再エネは大幅に増加した。しかし、再エネが増加すれば、再エネ賦課金も際限なく上昇するため、買い取り価格は毎年徐々に引き下げられてきた。
FITでは電気の需要に関係なく発電することになるため、発電事業と電力市場をむすびつける仕組みとして、22年4月からFIP制度が導入された。FIPは、FITのように買い取り価格を一定にするのではなく、補助額(プレミアム価格)を一定にする制度で、市場価格が高い時に電気をたくさん売ろうというインセンティブが働く。
こうした制度とともに、PPA(電力購入契約)による太陽光発電ビジネスが広がりつつある。
PPAとは、発電事業者と電気の買い手企業との間で結ぶ、電力購入契約のこと。企業の敷地内に太陽光発電設備を設置する「オンサイト型PPA」という事業モデルが普及している。送電線を利用せずに再エネ電気を受けるものだ。
もう1つ、遠隔地に設備を設置し、送電線を通じて電気を供給する「オフサイト型PPA」ビジネスも登場しつつある。
FIP制度が導入され、電力の市場価格高騰を背景に経済性が出てきたという。NTTアノードエナジー社が千葉県内に設置した太陽光発電の電気を、セブン&アイ・ホールディングスの商業施設に供給している例を紹介している。
さらに、「バーチャルPPA」というビジネスモデルも登場。発電した再エネ電気は市場に売り、その環境価値(非化石証書)だけを企業が買うという仕組みだ。今後さまざまなPPA事業が展開されると予想している。
脱炭素の政策に詳しい諸富徹・京都大教授は「ピンチはチャンス。日本は今、大きな社会の構造転換を狙えるとば口にいる」と話している。炭素税などの導入によって、産業構造の転換を促すこともできるという。
今回の電力危機の背景には再エネが急速に拡大し、既存の火力発電所の収益が悪化したため、老朽火力の休廃止が加速していたことと、原発の再稼働がうまくできなかったことを指摘している。
かつて70年代のオイルショックを乗り越えて日本のメーカーは成長した。今、新たな挑戦者が生まれるのか、注目したい。
(渡辺淳悦)