最高裁で否定された高額のマンション節税
「週刊東洋経済」(2022年8月13・20日合併号)は、「変わる相続」と題した特集を組んでいる。高額のマンション節税は裁判で否定され、毎年の生前贈与はいつまで続けられるか不透明だという。
今年4月、最高裁が下したマンション節税をめぐる2件の判決が衝撃を与えたという。相続人がはじいた相続財産の評価額を「低すぎる」として、国税当局が億単位の追徴課税を求めた。納得できない相続人が提訴したが、最高裁は国税当局の処分を適法と認めた。
共通しているのは、融資を行った銀行の内部文書を国税当局が証拠として提出し、不動産購入が明らかな相続税対策だと裁判所が認めた点だ。
1件目の訴訟では、三菱UFJ信託銀行で、不動産融資に際し、行内で回覧された稟議書に「相続税対策のため不動産購入を計画。購入資金につき、借り入れの依頼があったもの」という記載が、国税当局の有力な証拠になったようだ。2件目の訴訟でも、融資をした千葉銀行の「コンタクト履歴」が証拠になった。
内部文書を国税当局につかまれる事態が増えれば、銀行は営業姿勢の転換を余儀なくされそうだ、と予想している。
税理士の清三津裕三氏が、マンション節税の「線引き」について、まとめている。
ダメなのは「相続税の軽減を主たる目的で行っていること」。裏返せば、不動産の取得が、自宅としての利用や不動産賃借を含む事業での利用など、経済合理性があって、副次的に相続税の軽減につながるケースは、原則該当しないと考えられる、としている。
また、不動産の購入金額の大小は直接影響しないが、被相続人の資産に比べ、不相当に大きな金額の投資は「相続税対策が目的」と見なされやすくなるおそれがある、と警告している。
「暦年贈与が廃止される?」との観測が広まったのは1年半前だ。もらった金額が年間110万円の基礎控除(非課税枠)の範囲内なら贈与税がかからない。毎年110万円を親が子に贈与している家庭も少なくない。
だが、21年度税制改正大綱の記載がきっかけで、暦年贈与が廃止されると思った関係者もいた。結果として、本格的な議論は起こらず、22年度税制改正大綱にも具体的な記載はなかった。
現在、贈与を特定の目的に使える、3つの非課税制度がある。「教育資金」「結婚・子育て資金」「住宅取得等資金」だ。これら3つの非課税制度はいずれも、高齢世代から若年世代への資産移転を促進するために設けられた。
しかし実態は、富裕層の資産移転にも利用されており、「格差の固定化につながる」という批判もある。3つの制度は23年中に適用期限を迎える。存続するのは住宅資金だけか、という見方を紹介している。
贈与については一昨年来、さまざまな憶測が流れてきた。いまだ結論は出ないが、公平性を高めるという流れは止めようがないようだ。