元本返済の猶予「5年間」の企業も多く...返済はどうなるか?
問題は、新型コロナが再び猛威を振るい、終息が見えない中で、ゼロゼロ融資を受けて経営は改善せず、元本返済の猶予を5年間受けている企業も多いことだ。
その場合、それでも、政府系金融機関では2025年3月から、民間金融機関では2025年5月から元本返済が開始されることになる。
大手信用調査会社の東京商工リサーチによると、2019年の企業倒産(負債総額1000万円以上)は件数が8383件(前年比1.7%増)、負債総額は1兆4232億円(同4.1%減)だった。
ところが、新型コロナ禍の中にあって、2020年は件数が7773件(同7.2%減)、負債総額は1兆2200億円(同14.2%減)と件数、負債総額とも減少した。件数は18年以来、2年ぶりに前年を下回り、8000件を下回ったのは30年ぶりだった
そして、2021年も件数が6030件(同22.4%減)、負債総額は1兆1507億円(同5.6%減)と件数、負債総額とも減少している。件数は1964年の4212件に次ぐ、57年ぶりの低水準だった。いかにゼロゼロ融資が企業倒産を防いだのかは明らかだろう=表2。
だが、2022年4月以降、企業倒産は増加に転じている。すでに7月まで4か月連続で、倒産件数が前年同月比で増加している。負債総額も6月としては2017年以来、5年ぶりに1兆円台に増加した=表3。
もちろん、企業倒産増加の原因は、ゼロゼロ融資の返済だけではない。
むしろ、原油・資源高や円安進行による輸入物価高によるところが大きい。しかし、これらの要因によって業績が悪化すれば、結局、ゼロゼロ融資の返済が滞り、倒産という道筋を辿ることになる。
ゼロゼロ融資の返済は、まだ始まったばかりだ。前述のように、23年春から融資額に金利が付与されることになれば、倒産件数の増加は必至と見てよいだろう。
しかも、米欧が利上げを進める中で、日銀は大規模金融緩和による低金利政策を継続しているが、いずれ利上げを行う時はやってくる。
その時、ゼロゼロ融資は大量の企業倒産への「引き金」となるかもしれない。