暗号資産バトルは、動きが止まった。北海道大学の花野直樹さんは、暗号資産をマクロ経済の環境から分析。「買い場が来るまで静観を続ける」という。「merge」が迫るイーサリアムに注目する明治大学の城正人さんも、今週(2022年8月1日週)は静観。慎重を期す。
東京大学の迫嵩明さんは、今週も取引を見送ったようだ。
FRB「タカ派」発言、株価下げたいのが本心?(北海道大学 花野直樹)
トレードについては、今週(8月1日週)もノーポジで終わりました。ここからマクロ経済の環境を考え仮想通貨の買い時を考えていきたいと思います。
今週もまたアメリカの重要な経済指標がたくさん発表された週でした。今後の値動きを占うために発表された重要指標(ISM製造業指数、雇用統計)の結果を振り返りたいと思います。
まず、米ISM製造業指数は市場の事前予想53.5に対し結果は56.7と4か月ぶりの高水準に達し、景気後退懸念が和らぐ結果となりました。次に雇用統計は、就業者数予想25万人に対して結果は52.8万人と2倍近い数字になり、アメリカの景気は強いことがわかりました。
また、平均時給は前年同月比5.2%増と賃金インフレは止まっていません。この結果からわかることは、インフレは収まっていないことに加え、景気は強いためFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを遠慮なく行うだろうということです。
そのため、長期、短期の金利も上昇し、株価は下落。米ドルは上昇という結果になりした。しかし意外にも仮想通貨は上昇して5日(金)を終えました。チャートを見てみると仮想通貨はここ最近、安値を切り上げて徐々に上昇しています。
しかし、まだ下降トレンド途中のフラッグの中にあり、前回の記事で書いたとおり、本格的に上昇するのはインフレの終息と利下げが行われた時だと考えていますが、今回の指標結果は、その期待がまた遠のいたということを意味すると思います。
仮想通貨と連動している(ここ1週間は逆相関でしたが......)株価指数もみると、景気が強いという下支えがある一方で、価格が下落しないとインフレ抑制のために利上げをしている意味がなく現在の価格は少し上げすぎかな、と考えています。FRBメンバーからも、ここ数日でタカ派の発言が出ていることからも、やはり株価を下げたいのが本心ではないかと考えられます。
また、ビットコインと米ドルについては逆相関があるという話もあります。ドルが弱いときに資産の逃避先として仮想通貨が買われると考えると、確かにわからない話ではないですし、相関を表すインジケーターを見ても逆相関の部分が多いと思います=図下部の青色のインジケーター、0より上なら正相関、下なら逆相関。では、指標結果から米国経済が強く利上げが続くと考えた時にドル高の方向もまだ続くと考えられます。
このようにマクロ経済の状況を見ると仮想通貨がどんどん上昇していく理由は見当たらないため、今後も買い場が来るまで静観を続けようと思います。
今週は取引せず。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
8月5日現在 9754円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
今回の経済指標は全体的に予想数値を上回りましたね。インフレが加速していることから雇用者数は少なめと考えられていたのに対して、結果は予想の2倍ほど。この結果を受けて9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.75%の利上げ予想が強まっています。今後金利が上がり続ければ、株式市場や仮想通貨市場はなかなか上昇しにくくなると考えられるでしょう。
ビットコインと米ドルの逆相関関係については、以前からさまざまなところで指摘されていますね。参考程度に米ドルのチャートも確認しつつ、引き続き経済指標や金利・株式市場の動きを見ていく必要がありそうです。
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
イーサリアム、Merge後に2種類に分裂!?(明治大学 城正人さん)
2週にわたってイーサリアムの今後についてお伝えしてきました。「merge」がまもなく行われ、コンセンサスアルゴリズム(ブロックチェーンの意思決定モデル)がPoWからPoSに変わるという点で注目が集まりますね。
今週は「Merge」に向けてどのような投資戦略をとって行くべきか、詳しく書いていきます!
◆ ハードフォーク(仕様の変更)が発生?
イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムがPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)モデルへと変更されます。PoWは大量の演算によってセキュリティを担保する方式、PoSはその預け入れられた資産によってセキュリティを担保する仕組み。
しかし、長い間PoWの仕組みのもとで演算装置に多額の投資を行ってきた「マイナー」たちの中にはこの変更が気に入りません。そこで、一部の人々はイーサリアムのPoS化に反対してPoW方式でのイーサリアムを続けようとします。
すると、下図のように現在のイーサリアムが分岐し、同時に2本のブロックチェーンが出現することとなります。通常であれば分岐したとしても正統でないほうのブロックチェーンはすぐに廃れていき、存在しないも同然の状態になりますが、今回はアップデートによる変更が大きいため反対する人も多く、PoW側もある程度支持され、存続することが予想できます。
つまり今、イーサリアムを持っておけばMerge(マージ)後に2種類のイーサリアムに分裂するということです。
◆ ズバリ投資戦略は?
結論から言えば、「イーサリアムの保有、そのヘッジ」です。具体的にはMerge前にイーサリアム現物の保有、先物売り、Merge後にイーサリアム現物売却となります。現物と同額の先物ポジションによってヘッジしますからリスクは最小限です。
さて、戦略をわかりやすく説明します。まず現在のイーサリアム(ETH)はMerge到来とともにETHposとETHpowに分裂します。Merge前のETHの価格を「1」としてMergeを経てETHpos 0.9とETHpow 0.1に分裂。
先物価格はMerge後正統なブロックチェーンであるETHpos基準に算定されますから、0.9となります。現物はETHposとpow合わせて「1」、先物売りは0.9両方決済すると0.1の差額を手に入れることが可能です。
今回は単純化してpos0.9とpow0.1に分裂したと仮定しましたが、実際にはpos0.95 pow0.1のように分裂したETHを合計した価格が分裂する前の「1」を超えるでしょうから、収益チャンスはさらに大きくなります。
注意点として取引所に現物イーサリアムを置いたままになると、対応が遅れるため自前のウォレットで管理することをオススメします。
◆ まとめ
今週はMergeに際しての投資戦略をみてきました。小さいリスクで収益を得るチャンスですが、あくまで運用は自己責任で!
◆ 今週の取引
なし(保有残高 現金 1万111円)
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
8月5日現在 1万111円
◆ 池田昇太のワンポイントアドバイス
最近になってイーサリアムのハードフォーク説が出てきましたね。それを踏まえて、すでに対策を考えているのは素晴らしいです。今後イーサリアムがPoSに移行すれば、いわゆる「金利の付く通貨」となりますし、昨年のアップデートである「EIP1559」以降は基本手数料がバーンされるようになりました。
さらにNFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)とさまざまな用途で使用されていれば、取引数の増加に連れてバーンされる量も増えるため、「イーサリアムは価値が付きやすい仮想通貨となるのではないか」との見方もありますね。
しかし現在のマイナーからすれば、変更が気に入らないのは事実ですので、ハードフォークの実施には注視しておく必要があるでしょう。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
◆ 今週は多忙のため、取引を見合わせました(東京大学 迫嵩明さん)
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
8月5日現在 1万円
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆ ◆ アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/