「他人がいくら稼いでいるのか」は気になるものだが、なんと平均年収が2000万円を超える会社があるという。
東京商工リサーチが2022年8月9日、「2021年度『上場企業平均年間給与』調査」を発表したが、それによると、平均年収が605万5000円に達し、この10年間で最高額であることがわかった。
トップ10社は平均年収が1400万円を超えるが、いったいどんな企業がそれほどの業績をあげているのか。
上場企業の平均給与、民間の平均496万円の1.2倍
東京商工リサーチによると、2021年度の上場企業3213社の平均年間給与は、605万5000円(前年度比1.7%増)で、2020年度(595万1000円)から10万4000円増加した。2019年度と2020年度は2年連続で前年度を下回っていたが、3年ぶりに2018年度と同額に回復した=図表1参照。
前年度と比較可能な3102社では、約7割(67.2%)にあたる2087社が前年度の平均給与を上回った。上場企業の平均給与は2012年度から10年間で6.0%伸びており、賃金が伸び悩む民間企業と好対照となった=再び、図表1参照。
「民間給与実態統計調査」(2020年度分、国税庁)によると、民間企業の平均給与は495万7000円(正規雇用)だから、上場企業の平均給与はその1.2倍の水準となる。上場企業の平均給与の中央値は588万3000円(前年度576万8000円)で、3年ぶりに上昇した=再び、図表1参照。
平均給与のトップ10社を見ると、5位伊藤忠商事(1579万7000円)、6位三菱商事(1558万8000円)、7位三井物産(1549万1000円)、9位丸紅(1469万2000円)、10位住友商事(1406万3000円)と、総合商社が5社もランクインしている=図表2参照。
トップ10社、総合商社以外は個性的企業ばかり
総合商社を除く5社は、いずれも個性的な企業ばかりだ。
1位になったのは中堅・中小企業を対象にM&A仲介事業を行うM&Aキャピタルパートナーズ(東京都千代田区)で2688万4000円。後継者難に悩む中小企業を専門として急成長を続け、前年度(2269万9000円)から18.4%も増え、2014年度から8年連続でトップを維持した=再び、図表2参照。
2位の精密機器メーカーのキーエンス(大阪市東淀川区、2182万7000円)は、企業向けの機器開発・販売を専門にしており、さまざまな年収調査ではトップクラスの常連。3位の大手不動産ヒューリック(東京都中央区、1803万2000円)は、東京銀座など好立地の老朽化した自社物件を建て替えて、付加価値を付けて賃料を増やしていく戦略で業績を伸ばしている=再び、図表2参照。
4位の不動産金融商品開発の地主(大阪市中央区、1694万4000円)は、今年1月に旧・日本商業開発から社名変更をした。「建物を持たずに土地のみに投資して、地主に徹する」という独自のビジネスモデルを築いている。8位の製薬メーカー、ソレイジア・ファーマ(東京都港区、1490万円)は「がんと向き合う人たちの未来を照らす希望でありたい」をスローガンに、がん領域の革新的医薬品開発・販売に特化している=再び、図表2参照。
産業別では、最高は電気・ガス業の731万7000円。以下、建設業713万5000円、不動産業674万6000円、金融・保険業649万6000円と続く。最低は小売業の472万1000円。トップの電気・ガス業と最低の小売業の差は259万6000円で、1.5倍に開いている=図表3参照。
平均給与額の幅を金額別にみると、最多が「500万円以上600万円未満」(984社、30.6%)で、次いで「600万円以上700万円未満」(783社、24.3%)、「500万円未満」(742社、23.0%)、「700万円以上800万円未満」(442社、3.7%)、「800万円以上900万円未満」(152社、4.7%)の順となった。1000万円以上は57社(1.7%)で、前年度から8社増えた=図表4参照。
これを見ると、「500万円以上600万円未満」と「500万円未満の平均給与額」の割合が前年度から減少した一方、「600万円以上のレンジ」の割合が増加し、上場企業の間でも業績、業種による格差が広がったかっこうだ。
調査は、2021年度決算(2021年4月期~2022年3月期)の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の平均年間給与を抽出、分析した。
(福田和郎)