何をもって「地元理解」とするのか?
処理水の放出について、地元の関係者らの理解は今も得られていない。
政府と東電は2015年、福島県漁連に対して「関係者の理解なしに、いかなる処分(海洋放出)もしない」と文書で約束している。
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は「断固反対」との姿勢を貫き、22年6月に「断固反対であることはいささかも変わらない」との特別決議を採択している。福島県漁連の野崎哲会長も7月末、報道陣の取材に「放出反対は、いささかも変わるものではない」と述べている。
そもそも、何をもって「地元理解」というか、はっきりしていない。
今回の県・2町の「事前了解」も、あくまで工事の計画に必要な安全対策が備わっているかを確認する手続きに過ぎない。
内堀雅雄福島県知事は8月2日夕、県庁で東電の小早川智明社長らに事前了解を伝えた後、「さまざまな意見があり、県民や国民の理解が十分に得られているとは言えない。関係者の理解が得られるよう、丁寧に対話を重ねて下さい」と釘を刺した。
「国と東電が、処理水の取り扱いについては当事者」(内堀知事)だから、住民や漁民から国と東電が了解を得る必要があり、県は主役ではないという意味だ。
東電も、「処理水のプロセスは政府の決定に従って取り組んでいる。今後、国とも相談しながら、プロセスを検討したい」(小早川社長)というように、東電として地元に説明するとしても「理解を得た」と独自に宣言できるはずもない。