東京電力福島第一原子力発電所(福島県)の汚染水を浄化した処理水の海洋放出をめぐり、東電は2022年8月4日、放水に必要な海底トンネルなど設備の工事を始めた。23年春までの完成をめざす。同原発廃炉に向けた懸案の一つがようやく動き出す。
ただ、天候などで工事が順調に進む保証はないうえ、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)は反対の立場を崩していない。実際の放出の前提となる「地元理解」は得られていないことになり、予定通り放出できるか、予断を許さない。
タンクに保管する「汚染処理水」、23年秋以降満杯に
福島第一原発では、1~3号機で溶けだした燃料を冷却する水と地下水が混じり合った高濃度の放射性物質を含む「汚染水」が日々、発生している。
これを多核種除去設備「ALPS(アルプス)」にかけ、放射性物質の濃度を下げている。これが「汚染処理水(処理済み汚染水)」と呼ばれるものだ。しかし、ALPSで除去できない「トリチウム」という放射性物質が含まれている。このため、一定の基準以下まで濃度を薄めた「処理水」として放出するというのが、いわゆる「海洋放出問題」だ。
「汚染処理水」は原発敷地内のタンクに保管している。早ければ、22年秋にも満杯になると言われたこともあるが、現在の見通しでは23年秋以降に満杯になるという。また、今後の廃炉作業のために必要なスペースを確保するために、タンクを減らす必要がある――これが、海洋放出が必要な理由だ。
J-CASTニュース 会社ウォッチが2021年4月16日付「汚染処理水の海洋放出 原発推進派と反対派それぞれの言い分」などで報じたように、政府は21年4月、海洋放出の方針を決定した。
これを受け、東電が必要設備整備などをまとめた「放出計画」を12月に原子力規制委員会に申請し、22年7月、認可を受けた。そして、福島第一原発が立地する大熊、双葉両町と福島県は、県と2町が東電と結ぶ安全協定に基づき、着工を「事前了解」し、今回の着工になった。