「ステップアップのため転職したい」と申し出てきた次世代リーダーの部下...どう対応する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 9】(前川孝雄)

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「どうすれば、この職場に留まれるか」話し合い、何とか慰留する?

   こうした場合、思い入れの強い上司ほど取りがちな行動は、何とかAさんの希望を今の職場で実現できるように、異動・配置転換や待遇改善や昇進・昇格など、今後できることを検討することでしょう。

   人事とも相談しながら、どうすれば会社に留まれるか話し合い、何とか引き留めようと説得しがちです。しかし、ここではまず、当の中堅社員がどのようなキャリアを展望して転職を望むのか、背景や理由をよく理解することが先決です。

   いまや、人生100年時代。自分のキャリアの寿命が企業の平均寿命を上回り、大企業であっても終身雇用が揺らぐなか、もはや一つの会社で自分のキャリアを全うするイメージは優秀な若手ほどありません。

   現在の会社で評価され処遇が改善され出世すること以上に、自分の市場価値を高められるか、つまり転職市場でいかに評価されるかに関心が強いのです。新入社員であっても入社と同時に転職サイトに登録し、現在の仕事を続けながら、より自分の希望に合う会社を常に探索することが常識化しつつあるのです。

   このような社会背景を踏まえるなら、本人が転職を報告してきた段階で翻意を促すことは難しいものです。特に能力の高い社員ほど、社内の勤務条件や待遇を向上させることだけで離職を防ぐことは困難でしょう。

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