政府主導で産業育成進める中国への対抗、生産握る台湾の有事への備え
いうまでもなく、半導体はあらゆるハイテク機器に不可欠な「産業のコメ」であり、軍事技術にも使われる重要物資だ。ここで最先端技術を握ることは、経済安保上のカギになる。こうしたことから、日米が協力し、2020年代の実用化をめざす。
日本側はこの2プラス2で、共同研究を進めるための中核となる新研究組織の立ち上げを表明。産業技術総合研究所、理化学研究所、東京大学など9機関でつくる予定で、国内外の企業や他の研究所にも参加を呼びかけるとした。
このように、日本は周到に「仕込み」を重ねてきた。
振り返ると、5月に経済安全保障法を成立させた。このうち、「重要物資」の供給強化と、半導体など「重要技術」の研究開発支援を8月1日に先行して施行。7月26日には、経産省が半導体大手キオクシア(旧東芝メモリ)と、米ウエスタンデジタルの共同の半導体の新工場(三重県)の建設に、投資額の3分の1に当たる929億円を助成することを決定。春にも台湾積体電路製造(TSMC)などが熊本県に建てる工場に4760億円を補助すると決めている。
米国でも、7月28日に半導体産業の生産や研究開発などに約520億ドル(約7兆円)の補助金を投じる法案が可決され、バイデン大統領の署名を経て成立した。米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)の新工場建設に支給される見通しだ。
日米は、中国が政府主導で産業育成に取り組むのに対抗するために、こうした公的な産業支援も必要と判断したものだ。また、世界の先端半導体における生産能力の9割が台湾に集中しており、台湾有事になれば生産に深刻な影響が出かねないことも、今回の半導体での協力の大きな要因になっている。