危機感募らせる宿泊業...「第7波」感染拡大、直面する「コロナ関連融資」返済、人材流出も激しく

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   新型コロナウイルス感染の「第7波」が押し寄せる中、ホテルや旅館などの宿泊業は危機感を一段と募らせている。

   感染再拡大で収益力が戻らないまま、コロナ関連融資の返済開始時期が迫っているからだ。返済できるかを不安視する声は他の業種より多く、倒産や施設閉鎖が増加する懸念も広がっている。

  • 宿泊業が厳しい(写真はイメージ)
    宿泊業が厳しい(写真はイメージ)
  • 宿泊業が厳しい(写真はイメージ)

コロナ関連融資「借りた」...最多が「旅行・ホテル」72.3%

   第7波は、宿泊業復活のチャンスになると見込まれていた夏の行楽シーズンを直撃した。

   宿泊業者が期待をかけていた、政府による旅行支援策の全国拡大は延期されてしまった。今回は行動制限がないことから、「キャンセルは限定的」(旅行関係者)という見方もあるが、旅行を取りやめる人は実際には少なくない。

   「キャンセルしても料金が返ってこないので、仕方なく旅行する。本当は怖い」(東京都内の30代女性)と話す人もおり、盛り上がりに欠けているのが現実だ。

   厳しい経営が続くなか、宿泊業が直面している大きな問題が、コロナ関連融資の返済だ。コロナ禍で業績が悪化した企業を支援するため、政府系金融機関や民間金融機関が2020年5月、さまざまな条件を優遇したコロナ関連融資制度を設けた。

   信用調査会社の帝国データバンクの今春の発表によれば、コロナ関連融資について、「借りた・借りている」企業は全体で52.6%。業種別では「旅行・ホテル」が72.3%と、最も多い。企業の資金繰りを支える効果は大きかった。

このままでは、インバウンド受け入れにも不安

   ただ、多くの融資は、今年末までに返済が始まるとみられている。

   大半の企業はスムーズに返済できる見通しとされるが、なかには返済に不安を抱く企業もある。帝国データバンクの同じ調査では、不安を抱いているのは「旅館・ホテル」の業種が最も多く、51.5%と半数を越えている。

   「第6波」以降は感染がやや落ち着き、6月からは外国人の観光目的の入国も認められた。インバウンド(訪日外国人観光客)はまだまだ戻っていないものの、多くの宿泊業は夏の行楽シーズンに期待をかけてきた。

   それが裏切られてしまったかたちだ。

   帝国データバンクによれば、2021年のホテルや旅館の休廃業と解散は174件と、過去5年で最多となった。22年春にはJR名古屋駅前の名古屋ニューグランドホテルが閉館するなど、宿泊業の閉鎖は後を絶たない。

   「この夏も厳しい経営が続けば、融資の返済も困難となり、倒産などが広がるかもしれない」(旅行関係者)との見方も出ている。

   宿泊業の休廃業などが続き、「コロナ禍が収束しても、インバウンドを十分に受け入れられなくなるのではないか」との不安も高まっている。

   先行きが見通せないことから、宿泊業からの人材流出も激しいとも。コロナ禍以前から宿泊業の人材確保は深刻だったが、今後はさらに厳しくなりそうだ。

   このままでは観光立国を目指すどころではなくなる恐れもある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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