まるでブラック企業の広告塔「ストロングマネジメント上司」なんて、もういらなくないですか?【vol.15】(川上敬太郎)

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組織の風通しが悪く、パワハラ体質が、不正行為につながってしまった

   そんな、時代の変化を如実に感じた印象深い会話があります。合同でイベントを企画していた会社の社員と雑談を交わしていた時のこと。その社員は、こんなことを言いました。

「先日会社に残って仕事していたら、夜8時を過ぎたころ、上司が残っていた社員たちの机の上にお菓子を置いていったんです。わざわざ外に行って買ってきたみたいで...」

   遅くまで頑張って仕事している社員をねぎらうために、お菓子を買ってきてくれた優しい上司の話なのかと思いきや、その社員は憤慨した様子でこう続けました。

「それって、まだ帰るな! もうひと踏ん張り働けってメッセージですよね?」

   24時間タタカエマスカ?の時代なら、夜8時過ぎに配られたお菓子から部下が受ける印象は、まったく違っていたでしょう。「この仕事が終わるまで帰るなよ!」と指示し、部下のプライベートにしわ寄せがいくなんてことは日常茶飯事でした。

   しかしワークライフバランス前提の時代に、長時間労働が続いたり、それで部下が心身の健康を害してしまうようなことになれば、上司の責任が問われることになります。部下のプライベートのあり方にも配慮しつつ、より短い労働時間でより高い成果が出せるように導く。それがいまの時代の上司に求められるマネジメントなのです。

   それなのに、強面で逆らえない雰囲気を醸し出し、心身が擦り切れるまで働く部下を見て目を細め、「夜遅くまで頑張っている」などと称賛する、存在自体がブラック企業の広告塔のような時代遅れの「ストロングマネジメント上司」は、いまもあちこちの会社の中にいるのではありませんか?

   そんなことを思いながらネット記事を見ていたら、トラック製造会社が長い間、不正を隠蔽してきたというニュースが目に入りました。調査委員会の報告によると、組織の風通しが悪く、パワハラ体質とのこと。不正を隠し続けるために、「ストロングマネジメント上司」が暗躍してきた様子がうかがえます。

   「ストロングマネジメント上司」がはびこってきたツケは、これからもいろんな会社で、あらわれてくることになりそうです。トラック製造会社のような事例は、決して対岸の火事ではありません。過去は変えることができないのですから、多くの会社にとって明日はわが身です。

   でも、未来はいつでも変えることができます。いまのご時世、「ストロングマネジメント上司」なんてもういらなくないですか?

(川上敬太郎)

川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
川上 敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家
男女の双子を含む、2男2女4児の父で兼業主夫。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌「月刊人材ビジネス」営業推進部部長兼編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。
雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する「働く主婦・主夫層」の声延べ4万人以上を調査・分析したレポートは200本を超える。
NHK「あさイチ」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」などメディアへの出演、寄稿、コメント多数。
現在は、「人材サービスの公益的発展を考える会」主宰、「ヒトラボ」編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。
1973年生まれ。三重県出身。
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