組織の風通しが悪く、パワハラ体質が、不正行為につながってしまった
そんな、時代の変化を如実に感じた印象深い会話があります。合同でイベントを企画していた会社の社員と雑談を交わしていた時のこと。その社員は、こんなことを言いました。
「先日会社に残って仕事していたら、夜8時を過ぎたころ、上司が残っていた社員たちの机の上にお菓子を置いていったんです。わざわざ外に行って買ってきたみたいで...」
遅くまで頑張って仕事している社員をねぎらうために、お菓子を買ってきてくれた優しい上司の話なのかと思いきや、その社員は憤慨した様子でこう続けました。
「それって、まだ帰るな! もうひと踏ん張り働けってメッセージですよね?」
24時間タタカエマスカ?の時代なら、夜8時過ぎに配られたお菓子から部下が受ける印象は、まったく違っていたでしょう。「この仕事が終わるまで帰るなよ!」と指示し、部下のプライベートにしわ寄せがいくなんてことは日常茶飯事でした。
しかしワークライフバランス前提の時代に、長時間労働が続いたり、それで部下が心身の健康を害してしまうようなことになれば、上司の責任が問われることになります。部下のプライベートのあり方にも配慮しつつ、より短い労働時間でより高い成果が出せるように導く。それがいまの時代の上司に求められるマネジメントなのです。
それなのに、強面で逆らえない雰囲気を醸し出し、心身が擦り切れるまで働く部下を見て目を細め、「夜遅くまで頑張っている」などと称賛する、存在自体がブラック企業の広告塔のような時代遅れの「ストロングマネジメント上司」は、いまもあちこちの会社の中にいるのではありませんか?
そんなことを思いながらネット記事を見ていたら、トラック製造会社が長い間、不正を隠蔽してきたというニュースが目に入りました。調査委員会の報告によると、組織の風通しが悪く、パワハラ体質とのこと。不正を隠し続けるために、「ストロングマネジメント上司」が暗躍してきた様子がうかがえます。
「ストロングマネジメント上司」がはびこってきたツケは、これからもいろんな会社で、あらわれてくることになりそうです。トラック製造会社のような事例は、決して対岸の火事ではありません。過去は変えることができないのですから、多くの会社にとって明日はわが身です。
でも、未来はいつでも変えることができます。いまのご時世、「ストロングマネジメント上司」なんてもういらなくないですか?
(川上敬太郎)